税理士事務所で働く人の年収総まとめ、所長や税理士、税理士補助・事務など
2020年10月12日
税理士は働き方や立場、役割、事務所の規模に応じて年収が異なります。
また、国の発表を調べても会計士と一緒に扱われているため、税理士の正式な平均年収などは分かりづらくなっています。
そこで今回は、税理士事務所で働く人の年収をまとめました。
働く人の役割や年収の目安、税理系の仕事は年収が低いのかという噂の真実なども併せて解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
税理士事務所で働く人とその役割
税理士事務所で働く人を大別すると、次のようになります。
・税理士
・税理士補助
・事務
・営業やマーケティング担当
それぞれ、どのような役割を担っているのか解説します。
所長
税理士事務所における所長とは、事務所に所属する従業員たちの責任者で、事務所の顔であり、事務所の方向性や方針を決める役割を担っています。
税理士が開業するには、下記の手続きを行います。
・税務署で個人事業の開廃業等届出書などを提出
・県税事務所で手続
・市町村役場で手続
個人事務所(一人親方)ならここまでですが、従業員を雇用する、あるいは法人化する予定なら次の手続きも必要になります。
・ハローワークで雇用保険関係の手続
・労働基準監督署で労災保険関係手続
・法人設立の手続
これらの手続きをすべて終えると、税理士事務所の代表として所長に就任します。
しかし、所長の役割は個人事務所とほかのパターンだと異なります。
個人事務所の場合、所長がそのまま税理士と事務と経理と営業を兼ねることになります。
税理士としての業務をこなしつつ、クライアントとアポイントメントを取り、事務所の収益をまとめます。
個人事務所以外のパターンとは、従業員を雇う、あるいは税理士法人のことを指します。
事務所の規模にもよりますが、中小規模の事務所だと個人事務所の所長と似たような役割となります。
しかし、大手事務所や税理士法人ともなれば、所長の役割は大きく変わります。
・クライアントから受注した案件の割振り
・マスコミ対応、インタビューなどで情報発信
大手事務所の所長ともなると実務に触れる機会は減り、事務所全体を見渡せる業務を担当する機会が多くなります。
税理士
事務所に所属する税理士の役割は、税理士法第2条にあるように、「第三者の求めに応じて税務代理・税務書類の作成・税務相談を行う」と定められています。
つまり、暮らしのパートナーとして依頼者からの相談を受けるのが税理士の役割です。
税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つを独占業務と呼び、独占業務以外を付随業務と呼びます。
基本的にに限定されます。
そのため、事務所が大きくスタッフが揃っていると、独占業務以外は担当しない税理士も珍しくありません。
一方で事務所の規模が小さいと、後述する税理士補助の付随業務や、営業・マーケティングも担当することもあります。
税理士補助
税理士補助は税理士資格がなくても行える付随業務を担当します。
付随業務は独占業務以外を指すため、範囲が広く煩雑としていますが、代表的な付随業務は下記になります。
- クライアント企業の領収書をチェック
- クライアント企業の給与計算や勤怠管理、社会
- クライアント企業のオフィス訪問
- 会計ソフトを使用して会計処理
- 書類のファイリング
これらの業務は税理士の資格がなくても行えて、それでいて税理士の独占業務に直結する重要な業務になります。
そのため、事務所の規模を問わず税理士補助の募集はある程度あり、2017年から2019年の有効求人倍率は高い数値を維持していました。
事務
税理士事務所の事務は、独占業務や付随業務と関係ない事務所内の事務作業が主となります。
クライアントに関する業務に係わらず、どちらかというと内向きで、事務所によっては募集していない場合もあります。
また、事務所によっては税理士補助の業務として事務所内の事務作業が含まれている場合もあります。
税理士の勉強をしたい、あるいは事務だけをしたいと目的や希望が定まっているなら業務内容はしっかりと確認しましょう。
営業やマーケティング担当
税理士事務所における営業・マーケティング担当とは、顧客に対して自分たちがどのようなサービスがあるのか、質や顧問料はどうなっているのかをアピールする役割があります。
インターネットが発達した現在、税理士も営業集客が重要になっており、顧客の獲得はどの事務所でも重要事項となっています。
しかし、ホームページの運営やSNSでの発信、セミナーの開催などを、独占業務を行いながら手配するのは難しいです。
そのため、独占業務を行う税理士とは別に、事務所の営業やマーケティングを担当する従業員を雇用する税理士事務所も少なくありません。
ただし、専門スタッフを採用しているのは大手税理士事務所や税理士法人で、事務所の規模によっては募集していません。
税理士事務所で働く人たちの年収
この項目では税理士事務所で働く人たちの年収を解説します。
なお、ここで解説する年収はあくまでも一例であり、実際の年収と異なる場合があります。
所長
税理士事務所の所長の年収は、開業する土地や状況によって大きく左右されます。
60歳以上の税理士が開業したころは日本の景気も良く、最低でも1000万円以上、高所得者ともなれば3000万円~5000万円、あるいは1億円という時代でした。
現在の開業税理士(所長)の平均年収は1000万円~3000万円と格差があり、人によっては年収300万円も珍しくありません。
税理士事務所の看板だけではクライアントが集まってくるわけでもなく、所長の営業努力や税理士としての実績が収入に直結します。
税理士
この項目では税理士を「税理士事務所・税理士法人に所属している税理士」として扱います。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、税理士と公認会計士の平均年収は891万円です。
税理士よりも公認会計士の方が国家資格としての難易度を高いことを考えると、税理士単体の平均年収は891万円以下と考えられます。
一方で、税理士として働くには、税理士事務所か税理士法人のどちらかに所属するのが一般的です。
この場合、事務所の規模にもよりますが、年収に大きな格差が生じます。
小規模の税理士事務所 | 大手税理士事務所 | 税理士法人 | |
---|---|---|---|
年収 | 300万円~500万円 | 400万円~900万円 | 400万円~1000万円 |
基本的に年収は年齢とともにアップする傾向にありますが、事務所や法人に所属していると1000万円の壁を超えるのは難しいとされます。
税理士補助
税理士補助の年収も税理士事務所の規模や税理士法人に所属しているかどうかで分かれます。
とはいえ、税理士ほどの年収格差はなく、年収200万円~500万円が目安となっています。
また、日商簿記の取得や、税理士試験の科目合格ごとに資格習得手当を付ける事務所も多いため、税理士補助をしつつ資格試験の勉強をする方も少なくありません。
事務
税理士補助の付随業務を行わない事務となると、一般的なパートやアルバイトと同じ扱いになります。
その場合の時給は1,100円~2,500円と事務所によって異なります。
仮に週5日勤務8時間労働だとすると、220万円~500万円ほどになります。
営業やマーケティング担当
営業やマーケティング担当は税理士たちとは違う部署に配属されます。
事務所の方針にもよりますが、所長に近いポジションで仕事をすることも多いため、年収は高い傾向になります。
また、営業やマーケティング担当は雇用形態が独特で、実績に応じて変動するケースや、業務委託をしている場合もあります。
そのため、高収入は期待できますが、相応に結果を出さないといけないシビアな役割です。
税理系の仕事は年収が低いのか?
税理士は難関国家資格のわりに年収が低いという意見がありますが、あまり間違っていません。
上記にもあるように、開業税理士の年収は1000万円~3000万円と高く、税理士事務所や法人に所属している税理士の年収は300万円~1000万円ほどと、大きな年収格差があります。
理由は様々ですが、税理士は営業の仕方やマーケティングの分析次第では収入を増やすことができます。
そのため、自分で開業して自分で営業を行える開業税理士の年収は高い傾向にあります。
また、複数の業務を行えるなどの特徴がある税理士事務所は市場価値が上がり、年収も向上します。
一方で開業税理士のなかに平均年収が300万円前後という方も珍しくないため、営業努力が重要な職業ともいえます。
会計事務所とは給与体系が違う?
税理士法第40条2項において、「税理士が設けなればならない事務所は税理士事務所と称する」と定めています。
つまり、税理士が開業する事務所はすべて税理士事務所となります。
一方で会計事務所は法律による規定がないため、正式名称ではない俗称扱いとなっています。
このような俗称があるのは、税理士事務所だと税金のことしか扱わないというイメージが付いてしまうため、税金以外の業務を請け負うということを強調するためと考えられています。
そのため、税理士が作った事務所でも会計事務所で、公認会計士が作った事務所も会計事務所と呼ぶことがあります。
税理士事務所と会計事務所の違いは正式名称か俗称の違いのため、基本的に給与体系や平均年収に大きな違いはありません。
ただし、公認会計士が開業した公認会計事務所だと税理士事務所と給与体系が違う場合があります。
まとめ
税理士の年収は個人の努力や実績に応じて変動しますが、所属税理士なら300万円~1000万円、開業税理士なら1000万円~3000万円が目安です。
ただし、税理士の数に対して企業の数は減りつつあるため、年収を維持するにはそれなりの営業努力や成果が必要になります。