自営業を法人化する人は多い?
個人事業主をはじめとする自営業では、事業が拡大すると、やがて法人化を検討することになるかと思います。
自営業を法人化すると、節税効果など多くのメリットがあるとされていますが、実際にはそうしたメリット・デメリットをきちんと意識できている人は多くありません。
「事業が軌道に乗ったら法人化しよう」くらいに考えられている方が多いのではないでしょうか。
自営業(フリーランス)の現状と、会社設立数などから、個人事業主が会社設立することを考えていきましょう。
フリーランス(自営業)の人口は増えている
まず、日本ではフリーランスという言葉には明確な定義がないため、フリーランス人口の正確なデータはありません。
フリーランスに仕事を提供するクラウドソーシング企業であるランサーズや、リクルート、内閣府などが、それぞれの定義する「フリーランス」の人口を調査しています。
ランサーズの調査では、2015年時点でのフリーランス人口は913万人、2020年時点では1,034万人と、5年間で100万人以上も増加しています。
また、専業だけでなく副業を含めたフリーランスをはじめた人の数は、2019年には287万人、2020年には312万人にもなるそうです。
リクルートの調査では、2019年時点で本業をフリーランスとして働く人口は約324万人、副業のフリーランスを含めると472万人とされています。
リクルートの調査でも、2018年から2019年にかけての一年間で、本業をフリーランスとして働く人口が約19万人増加しているというデータがあるそうです。
内閣府の調査では、個人事業主を含めたフリーランスの人口は、2019年時点で約341万人です。
これらのデータからわかるのは、フリーランスが増加傾向にあることと、現在はまだフリーランス人口はそれほど多くないことです。
2020年には新型コロナウイルスの世界的流行もあり、テレワークでの働き方や、新しい生活様式が定着しました。
テレワークをきっかけに、会社に出勤・所属しなくても働ける、ということに気が付いた人も少なくはありません。
また、社会の構造もテレワークやフリーランスでも働きやすいように変わりました。
日本におけるフリーランスは、もともと増加傾向にはありましたが、新型コロナウイルスの流行による社会の変化もあり、2020年以降はさらに増加していくことが考えられます。
会社の数も増えている
国税庁は「資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とする」との目的で、毎年「会社標本調査」を行っています。
会社標本調査のデータによれば、2013年以降、日本国内における法人数は毎年伸び続けています。
また、会社規模としては資本金1,000万円以下の会社が全体の85%以上、資本金1,000万円以下の会社を含む資本金1億円以下の会社は全体の99%以上におよびます。
会社規模があまり大きくない法人が大部分を占めていることがわかります。
個人事業主から会社設立を考える人が増えている
こちらは公式のデータはありませんが、当社では法人化のタイミングについてのお問い合わせが増えています。
前述のデータからもわかるように、個人事業主・フリーランスの人口は日々増えてづけていますし、法人の数も増え続けています。
法人の大部分は小規模で、その多くは個人事業主・フリーランスが法人化したものです。
フリーランスでの働き方が定着し、社会的にも受け入れられるようになってきたため、事業を軌道に乗せて、法人化を考える人も多くなってきているのです。
自営業を法人化するメリット
前項では自営業を法人化する人が増えている背景をご説明しましたが、ここからは実際に法人化した場合のメリットをご紹介します。
節税できる場合がある
自営業が法人化すると、法人税が課されるようになります。
法人税とは、法人の所得に対して課税される税金で、自営業における所得税に相当します。
そもそも所得税の場合には、所得額に応じて税率が高まります。
法人税の場合、法人税率は所得額に応じて大きく変動しません。
もしも事業で多くの利益が出ているのなら、自営業者として所得税を納税するよりも、法人化して法人税を納める方が課税額を軽減できる可能性があります。
信用力が上がる場合がある
自営業を法人化すると、銀行や取引先などからの信用力が高まるでしょう。
法人に関する情報は、謄本で確認することができるため、個人事業主と比較すると社会的な信用度は高くなります。
また、法人以外を取引対象としていない企業もあります。
信用力が上がり、金融機関からの融資を受けられる可能性も高まります。
自営業と比較すると、より多くの資金調達ができるケースも多いでしょう。
給与所得控除を利用できる
自営業では、売上から経費を引いた部分に所得税が課されます。
法人の場合は、経営者が受け取る役員報酬について、給与所得控除の適用が受けられます。
給与所得控除分は課税所得が減額されることから、節税効果を期待できます。
親族への給与でも節税効果が期待できる
法人化すると、家族へ給与を支払うことでも節税効果を期待することができます。
法人は、親族に対する給与についての経費計上が認められています。
親族に給与を支払えば、給与分を損金算入でき、また、所得分散による節税効果も見込めます。
採用がしやすくなる
個人事業主は法人に比べると社会的信用も低く、多くは仕事用のホームページなども無いために広告も難しいため、優秀な人材を採用するのは困難です。
法人化することで広告も出しやすくなり、社会的信用が高まるために優秀な人材も集まりやすくなります。
保険料の負担額が減る
自営業者が生命保険に加入したとしても、生命保険控除として享受できるメリットはわずかで、節税対策としての効果は小さいでしょう。
法人化すると、多くのケースで保険料の半額以上を経費として計上することが可能になります。
自営業よりも多くの利益を圧迫できるため、大きな節税効果が見込めます。
自営業を法人化するデメリット
メリットに比べれば少ないですが、やはり法人化にもデメリットがあります。
メリット・デメリットをよく理解したうえで法人化の検討をすると良いでしょう。
手続きに費用と時間がかかる
法人化には会社設立の申請が必要で、手続きには費用と時間がかかります。
会社設立するための資本金は1円でも可能ですが、申請時にはさまざまな費用が発生します。
たとえば株式会社の場合には、登録免許税が最低15万円+公証人認定手数料5万円程度+定款印紙代4万円+謄本交付手数料2,000円程度+銀行口座開設費用3,000円程度+法人用印鑑購入1万円程度、合計で25万円程度の費用がかかります。
合同会社の場合は登録免許税が最低6万円なので、16万円程度になります。
しかし、法人化すれば節税効果が見込めるため、長期的に見れば法人化したほうが費用は低くなるケースが多いでしょう。
社会保険に加入しないといけない
法人化すると、社会保険への加入が義務付けられます。
社会保険への加入は、従業員を雇わずに経営者一人だけの法人でも必要です。
社会保険料の支払いは、自営業にはなかった追加の費用です。
社会保険への加入による追加費用を考慮したうえで、法人化を検討すると良いでしょう。
赤字でも課税がある
法人は「法人住民税の均等割」という税目で、毎年必ず課税されます。
法人住民税の均等割は、売上額・利益額とは無関係に発生する税金のため、赤字でも課税されます。
自営業を法人化する場合の年収の目安
では、自営業から法人化するには、どのタイミングが良いのでしょうか?
具体的なタイミングをご紹介します。
年間利益が500万円を超えた場合
年間利益が500万円とすると、法人化した場合に納める税金の額は、個人事業主よりも約14万円少なくなります。
節税できる額と申請手続きにかかる費用などを考慮して、年間利益が500万円を超えたあたりからが法人化を検討する目安です。
年間売上が1,000万円を超えた場合
個人事業主で2年前の消費税課税売上高が1,000万円を超える場合には、消費税を納める義務が生じます。
消費税の納税義務が発生するタイミングで法人化すると、消費税の納税義務は免除されます。
新設法人は個人事業主とは別人格という扱いになるので、個人事業主の過去の売上高は影響がありません。
年間の消費税課税売上高が1,000万円を超えるタイミングも、自営業が法人化する目安になります。
不安な場合は専門家への相談がおすすめ
自営業から法人化のタイミングは、なかなか判断が難しいものです。
当社にも法人化のタイミングのお問い合わせが増えています。
もしも不安な場合は、ぜひ当社までご相談ください。
法人化のタイミングから、その後の申請までサポートいたします。