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ペーパーカンパニーは違法になる?実際の事例と設立のメリット・デメリットを比較

当記事では、ペーパーカンパニーとは何か、また、設立するメリット・デメリットは何かをご紹介します。

ペーパーカンパニーを設立することが、合法的な節税になるのかということや、近年のペーパーカンパニーの事例も併せてご確認ください。

ペーパーカンパニーとは

ペーパーカンパニーは、主に税金対策のために設立された登記登録済みの営業活動がない会社を指します。

他の呼び方として、「幽霊会社」や「ダミー会社」と言われることもあります。

ペーパーカンパニーは、タックスヘイブンと呼ばれる法人税の減免など税制上の優遇措置を行い、先進国等域外の企業進出による雇用や手数料で歳入を得る地域に設立されます。主なタックスヘイブンは、カリブ海周辺のパナマ、ケイマン諸島、英領バージン諸島、東南アジアのシンガポール、ラプアン島、中近東のバーレーン、キプロス島、ヨーロッパのジャージー島、スイス、リヒテンシュタインなどです。

以下で事例を用いて説明するので、概要だけではわからないという方は参照してください。

近年のペーパーカンパニーに該当する事例

ソフトバンクグループ(SBG)の子会社

2016年にソフトバンクが買収した海外企業の通信会社「スプリント」と携帯電話卸「ブライトスター」が所有する完全子会社がタックスヘイブンにあり、ペーパーカンパニーでした。

つまり、SBGは間接的にタックスヘイブンにペーパーカンパニーを所有していたことになります。

939億円ほどの申告漏れを国税局に指摘されましたが、SBGの過去の損失で相殺され、最終的には37億円の納税となりました。

京セラ

タックスヘイブンにある電子部品製造業の子会社の2017年〜2018年所得14億円ほどを親会社と合算していなかったことから申告漏れとして国税局から指摘されました。

国税局が子会社をペーパーカンパニーと判断したため、タックスヘイブン対策税制の対象となりました。

最終的な追徴税額は3億円ほどです。

日産自動車

2019年に日産自動車の前会長であるカルロス・ゴーン氏が逮捕されたことは、有名なためご存知のはずです。

実はこの件にペーパーカンパニーが絡んでいます。

ゴーン氏は、特別背任罪にあたり、2015年〜2018年に日産子会社「中東日産」からオマーンの販売代理店「SBA」に17億円ほどを送金し、その内5億6000万円ほどを自身が実質的に保有する投資会社「G F I」へと還流していました。

この投資会社「G F I」の所在地には、他に約40社ほどが登記申請されていることから、「G F I」がペーパーカンパニーであったことは明白です。

株式会社チューリップ

株式会社チューリップは、チュートリアルの徳井義実氏のペーパーカンパニーの社名です。

累進課税制度による所得税の税率は最大45%なのに対し、法人税の税率は23.2%であることから、所得の多い芸能人やスポーツ選手などは自身のペーパーカンパニーを通じて給料を受け取り節税しています。

徳井氏は、個人的な旅行代金や衣類の費用等を経費として計上していたことや、2016年〜2018年の3年間、確定申告をせず総額1億円ほどの申告漏れがあったことから脱税を摘発されました。

ペーパーカンパニーのメリット

節税対策になる

法人税の減額

法人税は、企業が各事業年度の活動を通じて得た所得にかかる税金のことを指します。

個人で言う所得税の法人版です。

累進課税制度により所得に応じて税率が変化するのと同じように、法人税でも資本金や所得に応じて税率が変化します。

例えば、中小法人は利益が年800万円以下の場合、税率の軽減措置を受けることができます。

このため、利益を分散させることで税率を下げることができ、結果的に全体で見ると節税できます。

消費税の減額

課税売上高が年1,000万円以下だと免税事業者となり、年5,000万円以下だと簡易課税制度を選択することができます。

売上高を分散させることで、売上高にかかる消費税の減額が見込めます。

交際費の増額

資本金または出資金の額が1億円以下の法人は、年800万円以下の交際費は損金となりません。

つまり、ペーパーカンパニーを設立することで、800万円×2社=1,600万円まで増額できます。

土地売却損の利益計上

地価の下がった土地を売却し、土地売却損を利益計上します。

法人の利益と同等の損額が出る土地をペーパーカンパニーに売却することで、損額と合算して利益ゼロとして計上することができ、利益にかかる税金を節税することができます。

債権が証券化できる

まず特別目的会社(SPC)という資産の流動化のためだけに作られたペーパーカンパニーを設立します。

そして、債権保有者が債権を設立したSPCに譲渡し、SPCは債権から得られるであろうキャッシュフローを裏づけに債権を証券として投資家に販売することで、貸付債権や売掛債権などの金銭債権を証券化することができます。

ペーパーカンパニーのデメリット

決算が必要

事業活動はなくとも法人として設立している以上、事業年度終了時に決算と確定申告の手続きが必須です。

このため、ペーパーカンパニーでも事務処理の手間がかかります。

法人税の支払いは必要

法人税は、事業活動を通じて得た利益にかかる税金を指します。

この中でも、ペーパーカンパニーに関係するのが、法人住民税です。

法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の2つから構成されます。

「法人税割」は、法人税額に法人規模に応じた税率を乗じて算出するため、赤字であればかかりません。

しかし、「均等割」は所得の有無に関係なく発生し、最低でも年7万円ほどは絶対にかかります。

ペーパーカンパニーは違法なのか?

ペーパーカンパニーは、法律の抜け穴をついているのでグレーゾーンですが、大抵の場合「脱税」とみなされ違法になります。

ペーパーカンパニーで節税を行う代表的な方法として、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立して節税する方法があり、多くの企業が実際にこの方法を採用しています。

しかし、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)により、海外子会社がペーパーカンパニーだった場合、海外子会社の利益は日本の親会社の利益との合算で日本の課税対象となります。

また、タックスヘイブン対策税制は年々改正されており、最近では令和元年度税制改正でペーパーカンパニー判定の管理支配基準が変わりました。

以上より、ペーパーカンパニー判定基準が年々変わったり、厳しくなったりすることを考慮すると、設立当初は合法でも税制改正で違法とみなされる可能性が高く、ペーパーカンパニーを設立するリスクは大きいと推察されます。

ペーパーカンパニーを設立するさまざまなケース

ニートが厚生年金などを受けとりたい場合

まず厚生年金などの会社の福利厚生には、法定福利費が発生します。

法定福利費とは、法令や政令によって定められた会社負担義務のある費用のことです。

ペーパーカンパニーでは、法定福利費を調達することができません。

名目上の労使折半で、全額自己負担するならば、厚生年金への加入は可能かもしれませんが、デメリットの項目で述べたように、ペーパーカンパニーでも事務処理が必要だったり、維持費がかかったりするため、本末転倒な結果になると考えられます。

サラリーマンが節税したい場合

サラリーマンが、ペーパーカンパニーを用いて節税することはできません。

なぜなら、「脱税」となり違法だからです。

しかし、プライベートカンパニーで小さな副業をするとサラリーマンでも節税できる可能性があります。

プライベートカンパニーとは、身内だけで経営する非公開会社のことを指し、主に個人の資産形成や管理のために設立します。

定期的な売り上げのある事業として確定申告するために最低でも年20万円の収入が必要です。

プライベートカンパニーを設立すれば、様々な支出を経費として計上できるため、結果的にサラリーマンでも大幅な節税ができます。

注意点

副業が禁止されている会社に勤めている場合、会社に副業がバレて本職を失えば本末転倒です。

自身を代表者としてプライベートカンパニーを設立すると、登記した際の代表者の氏名や会社所在地が公開され、本業の会社にバレる可能性が高いため、登記申請をする際には妻や家族を代表者とするのがおすすめです。

まとめ

ペーパーカンパニーとは、登記申請のみで活動実態のない法人を指します。

設立する主な目的は節税ですが、他にも債権が証券化できたり、交際費を増額できたり、土地売却損の利益計上ができたりするメリットがあります。

反対にデメリットは、決算が必須なことと法人住民税を赤字でも納税しなければならないことです。

今まで日本の大企業や富裕層の人々はペーパーカンパニーを国内外に設立することで、法人税や所得税の節税を行いました。

特に、企業の多くは国外のタックスヘイブンという税制上の優遇措置が受けられる地域にペーパーカンパニーを設立しました。

しかし、現在は外国子会社合算税制により、外国子会社がペーパーカンパニーと思われる場合、親会社と所得を合算して申告しなければなりません。

外国子会社合算税制は税制改正の度に変更が行われているため、今後もペーパーカンパニーの判断基準が変化することがあります。

ペーパーカンパニー認定を受けると大抵の場合は違法判決を下されるため、個人でペーパーカンパニーを設立するのはデメリットの方が大きいでしょう。

ペーパーカンパニー以外のサラリーマンの節税方法としてプライベートカンパニーを設立する方法があります。

「脱税」ではなく「節税」をするために、正しい知識を身につけましょう。