会社を設立する決心をしたはいいものの、実際に会社設立を終えるまでにどれくらいの期間や手続きが必要なのかわからないという方も多いと思います。
この記事では会社設立にかかる期間や手続き、費用まで詳しく解説しています。
「会社設立にかかる期間を知りたい!」という方におすすめの記事です。
ぜひご覧ください。
目次
会社設立をするための流れと期間
会社を設立する際は、どのような流れで手続きを進めるのでしょうか。
また、設立までに要する期間も気になりますよね。
会社設立登記の際は、法務局だけでなく税務署や年金事務所での手続きも必要になるので、思いがけず時間がかかってしまうケースもあります。
余裕のあるスケジュールで進めるために、登記申請の手順やそれにかかる期間についてご説明いたします。
登記するのに必要な事項と印鑑の作成
登記するためには、事前に決定しておかなければならない事項があります。
そちらを確認していきましょう。
- ①商号(会社名)
- ②事業目的
- ③本店所在地
- ④資本金
- ⑤事業年度
①商号
これは基本的には自由に決めることができます。
しかし「同一住所に同一のものがある場合」は登記することができません。
事前に所在地管轄の法務局で類似の称号がないか確認しておけば安心です。
また、銀行業でない企業が銀行という文字を使った場合など利用者やクライアントが混乱してしまうような会社名にした場合、不正競争防止法に違反する可能性が出てきます。
会社名にインパクトは大事ですが、あくまでも法律に則ったものにしましょう。
②事業目的
会社が主として行う事業やビジネスの内容を表すものです。
この目的に沿って、業務を行っていくことになりますので慎重に決定しましょう。
逆に事業目的がよくわからないと、社会的な信用が損なわれる可能性もあります。
また登記申請時には、目的の最後に「前各号に付帯または関連する一切の事業」を追加しておくことで、新事業を開始したとしても目的に関連していれば定款変更は不要となります。
③本店所在地
会社の住所のことを指します。
事務所を構えるのであれば、そちらで問題ないでしょうが、自宅やコワーキングスペース、レンタルオフィス、バーチャルオフィス等選択肢は複数ありますので、自社に適した住所を決定しましょう。
④資本金
会社の信用力です。
資本金が多ければ多いほど体力のある会社とみなされますし、資本金が少なく設立して間もない企業は信用力が低くなってしまいます。
1円でも起業することは可能ですが、そのような理由からあまりおすすめはできません。
対外的な評価のためにも多いに越したことはないですが、まずは当面の会社運営が可能な範囲で設定するのが現実的でしょう。
⑤事業年度
設定した時期によって、初年度の税金の支払い額が減ることもあります。
免税期間や住民税の均等割の支払い額を減らしたいという目的で設定することも可能ですが、日本での一般的な決算の時期と海外の時期にも違いがありますので、対外的な取引のしやすさも1つの観点として覚えておくと良いでしょう。
その他に準備しておくべきものとして印鑑があります。
具体的には、実印、銀行印、角印の3つを作っておけば大丈夫です。
実印は代表者印や丸印とも呼ばれますが、これが登記手続きの際に必要な印鑑となりますので、この印鑑を登記申請のタイミングで一緒に届け出てください。
また、銀行印は取引口座開設の際に利用され、角印は見積書や請求書などの実印を押すほどでもない書類に利用されるのが一般的です。
定款の作成と認証
登記申請の際には定款を提出する必要があります。
定款とは、会社の基本的なルールが記載されている文書のことを指し、定款をベースに会社運営は行われていきます。
その定款を定める際には、必ず決めておくべき「絶対的記載事項」が存在します。
この絶対的記載事項に不備がある場合は、定款として認められず定款全体が無効となってしまうので注意しましょう。
内容は下記の通りです。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額もしくは最低額
- 発起人の氏名・名称・住所
- 発行可能株式総数(株式会社のみ)
前述しましたが、これらの内容を事前に決定しておけば、ある程度スムーズに申請を進めることができます。
前項で触れていなかった発起人の氏名又は名称及び住所についてですが、発起人とは、設立手続きを実際に行う人のことを指しています。
誤筆が無いように申請してください。
また、発行可能株式総数は株式会社のみ必要な事項となり、合同会社等の設立の際は不要です。
これは、定款認証時に定めておく必要はありませんが、定款に定めていない場合は会社の設立までに定款変更手続きをして、定めを設けましょう。
株式会社の場合は定款の作成が終わったら、第三者のチェックが必要となります。
その証明をもらうことを「定款認証」といいます。
定款認証は会社の本店所在地を管轄する法務局に属している公証役場で行います。
定款は紙の他にPDFで用意することができ、電子定款と呼ばれます。
紙で定款認証すると4万円の収入印紙代が必要になりますが、電子定款では不要です。
紙と電子定款の違いによる不利益は特にないので、コストカットしたい方は電子定款での申請がおすすめです。
資本金の払込
資本金の払込みの流れは以下の通りですので、定款の準備が整ったら資本金を口座に振り込みましょう。
ただし、株式会社は定款の認証を受けた後になります。
- 1、発起人(代表社員)の口座の開設
- 2、口座に資本金の振り込み
- 3、口座の通帳をコピー
- 4、資本金の払込を証明する書面を作成し製本
たとえば、合同会社の設立時に出資者が4名いて、資本金が100万円の場合を考えてみます。
1人25万円を出資するのであれば、代表社員の口座にそれぞれ25万円ずつ振込みます。
この際出資者の名前と振込金額が定款と相違のないようにしましょう。
また代表社員の口座ですが、新しく作ったものである必要はありません。
これまでに使用してきた口座でも申請は可能です。
法人口座の開設については後述しますので、そちらを参考にしてください。
これで一通りの情報が揃いましたので、実際の申請書類の記入へ進みます。
必要書類作成と登記申請
これまで準備したものを基にして、登記書類の作成を進めていきます。
会社の形式によって提出する内容も異なってきますが、主に下記の書類が必要となってきます。
- 登記申請書
- 登記事項などを記載した別紙
- 印鑑届書
- 定款
- 発起人の決定書
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 出資の払込みを証する証明書
- 資本金の額の計上に関する証明書
これらの登記書類は製本する必要があるのですが、基本的には印鑑証明書以外の書類をまとめた上で、左側をホチキス留めするだけで問題ありません。
サイズはA4サイズで合わせてください。
そして、この登記申請は資本金を払い込んでから2週間以内に行う必要があり、その申請は代表者が行うのが原則です。
申請は法務局へ持参して提出することも可能ですし、郵送でも受け付けていますので、どちらかを選択して申請してください。
ただ初めての申請で書類の不備が心配という方は法務局に持参するのがおすすめです。
というのも申請時には収入印紙(会社形態によって金額は異なる)が必要となるうえ、決して安い金額ではないので間違いがないよう事前にチェックを入れてもらうのが良いでしょう。
法務局には、書類をチェックしてくれる窓口があるので事前に予約をして相談すれば安心して手続きを進めることができます。
法務局内には収入印紙の販売所もありますので、そちらで購入も可能です。
そうして申請した書類の手続きは5日〜15日程度で完了します。
都市部や繁忙期だと登録までにそれ以上の時間がかかるケースもあれば、申請が少ない地区だと2、3日で終わるケースもあります。
基本的には2週間前後かかると思っておいて良いでしょう。
登録が完了した日が会社の設立日になるというわけではありません。
会社設立日は「登記申請書を提出した日」であり、郵送の場合は書類が「法務局に到着した日」となります。
会社設立日は、会社がスタートする日ですからこだわりたいという方もいらっしゃると思いますので、郵送の場合は配達に指定日を設けるなどして対応してください。
株式会社と合同会社の設立期間の違い
ここまで法人を設立するための登記申請方法やその期間についてお話してきましたが、現在会社を設立するには2つの選択肢があります。
我々が普段目にするのは株式会社ですが、合同会社という法人形態もあり、それぞれのメリットやデメリットが存在します。
設立期間も異なってくるので、それぞれの特徴と合わせてご紹介いたします。
株式会社と合同会社とは
株式会社と合同会社の最大の違いは、出資者が経営を行うかどうかという点です。
株式会社の場合、経営を行うのは株主ではなく選出された取締役となります。
つまり出資者と経営者が分かれており、経営者は株主のために経営を行うという構図になっているのです。
そのため、株式を保有していなくても役員になることができますし、経営に関係なくても株式の保有が可能となります。
一方で合同会社は、経営者が出資者である必要があります。
株式会社と違って、出資者と経営者が分離していない形態となっています。
合同会社は株主の意向を反映する必要がないため、スピーディな経営が可能になる一方で、新株発行による資金調達ができないなど一長一短があります。
そもそも合同会社という形態は2006年に新設された比較的新しい会社形態です。
AmazonやAppleといった有名な企業もこの形態にはなっていますが、株式会社に比べるとまだまだ知名度は低いです。
その分社会的な信用が得られにくいケースもあるのですが、設立に関していえば非常に楽といえます。
後述しますが、コスト面に関しても株式会社よりも安く抑えることができますので、創業当時の資金繰りを助けてくれます。
メリットやデメリットはそれぞれありますが、最初の障壁となる設立手続きの煩雑さやコストといった悩みを軽減できるのは合同会社といっても良いでしょう。
設立する会社の立ち位置や将来を見据えた上で最適な会社形態からスタートしてみてください。
もちろん、会社の形態は途中で変更することも可能です。
設立期間における違い
株式会社と合同会社では設立の期間が変わってきます。
申請から登記完了までの期間が短縮されるという意味ではなく、申請までの準備内容が変わってくることに起因します。
まず、先述の通り株式会社設立の際は公証役場での定款認証が必要となります。
これは株式会社にのみ必要な事項となっており、合同会社はこのフローを踏まずとも登記申請が可能です。
公証役場に行かずとも直接法務局で申請すれば問題ありませんので必然的に準備期間は短縮されるのです。
また、株式会社は役員を選出する必要があります。
合同会社は、組織設計の自由度が高く柔軟な組織運営ができる一方で、株式会社には監査役の設置など法律上の制約がかかります。
出資者と経営者が分離する以上、それらを決定していくプロセスのある株式会社の方が設立までに多くの時間を要してしまうのです。
費用における違い
株式会社と合同会社では設立費用も異なってきます。
結果的には合同会社の方が最大で14万円ほど安く設立することができます。
どの部分で差が生じるかというと、1つ目は株式会社のみにかかる定款認証の金額です。
合同会社には必要ありませんので、公証役場で要する費用として5万円ほどの差がここで生まれます。
また、登録申請時に納める登録免許税も異なります。
基本的に、登録免許税は資本金×7/1,000で計算するのですがこれには最低金額が設定されており、株式会社の場合は15万円、合同会社の場合は6万円となっています。
専門家に設立のサポートを依頼する金額を除けば、合同会社は6万円程度の費用で設立が可能ですが株式会社は最低でも20万円程度はかかる計算となります。
設立時の14万円の差はとても大きいので、コストを重視したい方は合同会社での設立を検討してみてはいかがでしょうか。
また、費用に関連して企業の形態によって税金は変わってくるのかという疑問が出てきそうですが、税負担に関しては株式会社も合同会社も全く一緒です。
企業が負担する税金は、法人税と所得税が大半をしめますが、法人税は事業収益に対して課され、所得税は役員報酬に課されます。
役員報酬は原則として決定してから1年間は変えることができないというルールがあり、これはどの企業にも共通の事項となります。
ですので、報酬の調整で納税額を減額するということは不可能になっています。
くわえて課税売上が一定額を超えると、設立の2年後から消費税の納税義務が発生するのですがこちらも両者で異なるということはありません。
まとめると設立費用に関しては合同会社の方が最大で14万円程度安く設立することができ、その後の税金についての条件は一緒ということです。
費用面については理解できたと思いますので、その他のメリットやデメリットについても検討しながら最適な会社形態を選択するようにしましょう。
法人の口座設立にかかる期間
法人を設立したら、法人口座を作りましょう。
個人の銀行口座を作ったことがある方は多いと思いますが、法人の場合は審査に時間を要するのですぐに開設できるわけではありませんし、審査で落ちることもあります。
現金と身分証明書と印鑑があれば容易に作れる個人の一般口座と違い、法人口座はどのような性質を持っているのでしょうか。
ここからは法人口座について理解を深めましょう。
法人口座とは
法人口座とは、金融機関の口座の名義が会社名になっているものです。
会社を設立したら必ず開設が必要なものと思われがちですが、実はそうではありません。
開設義務は特にないので、会社の代表が持っている個人名義の口座を利用して会社のお金を管理しても問題ないのです。
しかし、その状態では会社のお金と代表個人の財産が混在しかねません。
登記された会社は、法人という名の通り1つの人格として認められています。
たとえ一人社長の会社だとしても法人と個人は人格が異なっているという考え方をしますので、会社と個人の資産は明確に分けておく必要があるのです。
また、取引先がお金を振り込む際の名義が個人名だとなんだか信用できませんよね。
税務署や取引先等の関係者に無用な心配をかけないためにも法人口座は開設しておきましょう。
さらに法人口座は持っているだけで社会的信用を得られるというメリットがあります。
融資の申込や大口取引をする際には法人口座を持っているかどうかが1つの判断材料になります。
法人口座の開設には一定の審査があるため、その審査をクリアしているという点で関係各所からの信用が得られやすいのです。
スムーズな資金調達や取引のためにも会社設立後はなるべく早く開設手続きをはじめましょう。
法人口座開設の流れと期間
まず、法人口座を開設するにあたり提出すべき書類や必要なものは下記の通りです。
これは会社設立が完了していれば全て揃うものです。
- 会社の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社の定款
- 実印
- 代表者の印鑑証明書
- 代表者の実印
- 代表者の身分証明書
- そのほか、会社の運営実態がわかる資料
銀行から渡される書類も不備なく記入して提出すると、審査がはじまります。
個人口座の場合だと最速でその日のうちに口座開設が可能となりますが、法人口座はすぐにというわけにはいきません。
法人口座は取引をスムーズに行うできる社会的な信用が高いものだとご説明しましたが、信用があるからこそ犯罪に使われるケースが増えています。
振り込め詐欺や投資勧誘詐欺などの犯罪で利用されないように、一定の基準をクリアしなければ開設することができない仕組みとなっているのです。
社会的犯罪の利用可能性が低く正当な理由で利用されることが証明できれば、1〜2週間程度で法人口座が開設されます。
法人口座を開設する上での注意点
口座開設をする際には、会社の代表者が申請に出向く必要がある場合が多いです。
スムーズに手続きを進めるためにもはじめから代表者が訪問するのが無難です。
代表者が口座開設を行った方が良い理由として、事業内容の説明を求められるからというのもあります。
その場で厳しく審査されるわけではありませんが、事業内容の説明を求められる場合もありますので、大まかには説明できるようにしておくのが得策です。
また、口座を開設するにしても金融機関の種類は多種多様ですので迷ってしまうこともあるかと思います。
基本的には実店舗がある都市銀行と、店舗が存在しないネット銀行に大別されますが、会社との距離や出入金のしやすさ、手数料などを考慮して決めると良いでしょう。
ただ、お伝えしている通り法人口座の開設には審査があり、特にメガバンクや都市銀行は厳しい傾向があります。
具体的な基準こそ明かされていませんが、下記の項目に当てはまる企業は通らない可能性が高くなります。
- 資本金の額が少額である(「1円会社」は注意)
- 固定電話がない
- 登録の住所がレンタルオフィスやバーチャルオフィス)である
- 公式サイトが存在しない
- 顧客や取引先と交わされた契約書や領収書がない
- 事業目的が曖昧で伝わらない
企業の実態や法人口座開設の正当性をきちんと伝えるために、資料の提出を求められることもありますので、事業開始後しばらく経過してから申請した方が柔軟に対応できるでしょう。
たとえ、メガバンクや都市銀行の審査に落ちたとしても、地方銀行や信用金庫、ネット銀行の法人口座は作れるケースもあります。
むしろ、ITベンチャーなどはネット銀行の法人口座をメインに利用していても違和感が少ないように、事業形態や取引先次第で金融機関を選択するのがおすすめです。
会社設立後に必要な手続き
口座開設もそうですが、会社設立後に必要な手続きもあります。
設立してからすぐに提出期限を迎える書類もありますので、登記が終わってから準備するのではなく事前に用意をしておくのが良いでしょう。
以下の内容が書類の種類と提出先、期限になります。
提出先の場所が離れていたり、混雑していて想定よりも時間がかかったりすることもあるので余裕を持ったスケジュールを組み、この期間も会社設立の期間に含めて考えてください。
税務署に届出を出す
あなたの会社を管轄する税務署に届け出る書類を見ていきましょう。
法人設立届出書
法人設立届出書は、会社設立から2ヶ月以内に提出してください。
この届出によって会社運営に伴う税金関連の書類が送付されてくるようになります。
提出の際は書類を2部作っておき、1部を提出用、もう1部を会社控えとして持っておきましょう。
税務署では控えにも受領印を押してもらうことができます。
後述しますが、法人設立届は税務署以外の都道府県事務所や市町村にも提出が必要になりますので、税務署以外にも提出先があることを忘れないようにしましょう。
郵送での提出も可能なので、臨機応変に使い分けてください。
提出時に必要な添付書類は下記の通りです。
- 定款のコピー
- 設立時貸借対照表
- 登記事項証明書
- 株主名簿
青色申告の承認申請書
青色申告とは、税務署に1年間に生じた所得や税金を申告する確定申告の一種です。
申告方法には白色申告というやり方もあるのですが、青色申告の方が節税メリットを受けやすくなっています。
青色申告は、白色申告よりも書類作成や手間が多い分最大65万円の特別控除を受けることができますし、家族に払う給与の経費化や3年間の赤字繰越期間を設けることも可能になります。
その青色申告をするために必要なのが、青色申告の承認申請書となります。
これは原則として会社設立から3ヶ月以内に提出することとなっています。
節税メリットの大きい青色申告をするために、忘れずに提出しましょう。
給与支払事務所等の開設届出書
給与支払事務所等の開設届出書とは、初めて従業員を雇用し給料を支払う場合に提出が必要となります。
従業員を雇用することになってから、1ヶ月以内に提出するようにしましょう。
開業時は1人でも事業が軌道に乗って人員を増やすなどの、開業と雇用の時期が異なるケースにおいては、個人の開廃業等届出書に「給与等の支払い状況」を記載していないことになるので、提出が必要です。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
従業員の税金を給料から天引きして納めることを源泉徴収といいますが、源泉徴収した所得税は基本的には毎月納付しないといけません。
納付方法は銀行や郵便局といった機関で毎月納める必要があり、その度に出向くのは結構な労力が必要です。
源泉所得税の納期の特例の承認を得るためには、給与支給人員が常時9人以下である必要がありますが、承認を受ければ納付時期を7月10日と1月10日の年2回まで減らすことが可能です。
ただし、これは納税額が減るということではなく、あくまでも事務作業が軽減されるということにご注意ください。
ちなみに提出期限についてですが、こちらは適用を受けたいと思ったタイミングの提出となるので特に決まった期限はありません。
棚卸資産の評価届出書
会社が販売や製造をするときには、一時的に商品や製品、原材料を仕入れることになります。
こうした在庫は棚卸資産とみなされます。
企業は期末ごとにその時点で所有している棚卸資産を評価する必要があり、金額を確定させます。
この評価方法は複数の種類があるため、事業年度ごとに評価方法を変えることで不正に利益を得ることも可能になってします。
そうした事態を防ぐために必要なのが棚卸資産の評価届出書であり、税務署が評価方法をチェックするためにこの届出書が用いられるのです。
提出しない場合は、最終仕入原価法という仕入れ時の単価で計算する方法が適用されるので、この場合は提出が不要となりますがその他の評価方法を行う際は、届け出るようにしましょう。
提出期限は、1期目の確定申告の提出期限となります。
減価償却資産の償却方法届出書
決算時に土地を除く固定資産の老朽化を考慮して、価値を減額させる手続きを減価償却といい、該当する資産を原価償却資産と呼びます。
減価償却の計算方法は、定額法と定率法が代表的ですが、未提出の場合は定率法が採用されます。
採用方法によって減価償却費が変動することから、どの方法を採用しているかを税務署に知らせるために「減価償却資産の償却方法届出書」が用いられています。
この届出書も棚卸資産の評価届出書と同様に、設立第1期の確定申告書の提出期限が締切となります。
年金事務所に届出を出す
年金事務所に提出する書類は以下の2つになります。
健康保険・厚生年金保険新規適用届
社会保険を適用するために必要なのが健康保険・厚生年金保険新規適用届になります。
加入が義務づけられているのは、以下の条件に該当する事業所です。
- 法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
- 常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所
例外として、5人以上の個人事業所であっても、クリーニング業や飲食店、ビル清掃業、農業、漁業等は当てはまりませんので、自社の事業と照らし合わせてから申請するようにしてください。
法人が書類を申請する場合は、法人(商業)登記謄本の原本、事業主が国や地方公共団体又は法人である場合は、法人番号指定通知書等のコピー、強制適用となる個人事業所は事業主の世帯全員の住民票の原本を添付する必要があるので、事前に用意しておきましょう。
原則として会社の設立から5日以内が提出期限です。
健康保険被扶養者(異動)届
健康保険被扶養者(異動)届が必要となるのは、社会保険の加入要件を満たした従業員を新たに雇用した場合に、従業員の家族が健康保険の被扶養者の認定を受けるタイミングです。
被扶養者の追加、削除、氏名変更があった場合も提出が必要です。
認定要件は、細かく設定されているため扶養家族が要件に該当しているかどうか確認した上で申請を行いましょう。
被保険者の扶養が発生した日から5日以内の提出が求められます。
地方自治体に届出を出す
前述した通り、地方自治体にも法人設立届出書の提出が必要です。
法人設立届出書
法人設立届出書は、税務署の他にも都道府県税事務所の法人事業税課や法人住民税課などと、市町村の法人住民税の担当部署への提出も必要です。
いずれのフォーマットも国税庁のホームページにアクセスすればダウンロードすることが可能です。
労働基準監督署に届出を出す
まず労働保険とは、労災保険と雇用保険のことを指します。
労災保険はアルバイトを含む全ての従業員に適用される保険で、雇用保険は31日以上の雇用の見込みがあり1週間の所定労働時間が20時間以上ある労働者を雇用する際に加入しなければなりません。
役員はいずれの保険も対象外ではありますが、初めて従業員を採用して労働保険に加入する際は、労働基準監督署への届出が必要になるのです。
具体的な提出書類は以下になります。
労働保険 保険関係成立届
保険関係成立届は、紙で申請する場合は特殊な用紙に記入することになります。
労働基準監督署かハローワークに直接出向いて受け取るか、郵送で請求して手に入れましょう。
提出期限は保険関係が成立した日から10日以内と早いので、採用が見込まれる場合は事前準備が大切です。
労働保険 概算保険料申告書
雇用契約が成立した場合には概算保険料申告書の提出も必要です。
労働保険料は年度の見込み給与額をもとに算出され、算出された金額を事前に支払うという納付方法になっています。
これを年度更新といい、その際に保険料の概算を申告するために用いられるのが概算保険料申告書です。
提出期限は保険関係が成立した日の翌日から50日以内となっており、保険関係成立届とズレがあることに注意してください。
ハローワークに届出を出す
労働保険の申請時には、労働基準監督署の他にハローワークでの手続きも必要です。
以下の書類がハローワークへの提出書類となります。
雇用保険 適用事業所設置届
前述した通り、雇用保険は1週間以上の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある従業員を雇い入れたときに適用されるので、それに伴って適用事務所設置届の提出が必要になります。
この書類は前項の保険関係成立届を労働基準監督署に提出すると付与される労働保険番号が必要になるので、まずは労働基準監督署での手続きを進めてください。
提出期限は、雇用保険の加入要件を満たす労働者を雇い入れた日の翌日から10日以内です。
添付書類は下記の通りですので、ご参考ください。
- 保険関係成立届の事業主控
- 事業所の実在、設置日や所在地などが確認できる書類(登記事項証明書等)
雇用保険 被保険者資格取得届
雇用保険適用事業所の設置が完了したら、次は従業員一人ひとりに雇用保険を適用させる必要があります。
その書類が雇用保険被保険者資格取得届です。
この書類は業種や規模等を問わず、従業員を雇用する場合は必ず加入させる必要があるので、適用事業所設置届を出すタイミングで合わせて提出しましょう。
会社設立のメリット
会社設立のメリットは、「税金面」「信頼度」「その他」の3つに大きく分けることができます。
- 税金面
- 信頼度
- その他
一点ずつ見ていきましょう。
①税金面でのメリット
会社は法人税の課税対象になる
個人事業の利益に課されるのは所得税である一方、会社の利益に課されるのは法人税です。
所得税は累進課税であり利益が増えてもその分を持っていかれてしまう可能性がありますが、法人税は一定なので利益を増やせばその分の利益を得ることが可能となります。
事業での利益が大きくなっている場合や、利益が今後増えていく見込みがある場合は、会社を設立した方が高い節税効果を得られる場合があります。
経費面でのメリットがある
生命保険や自宅兼事務所、自動車、退職金など、法人にした方が経費として認められる幅が広くなります。
経費は税金の控除対象にできるので、より多くの資産や費用を経費扱いにしてしまえばその分節税効果が高くなります。
また、会社では特に制約なく家族を雇用することができます。
個人事業主では、家族を雇用することはできず、都度給与を出さなくてはなりませんが、手伝ってくれる人を雇用することができるので、こういった面でも、経費削減に繋がるメリットがあります。
相続税がかからない
個人事業の場合、経営者が死亡すると全ての財産が相続の対象になります。
相続税の控除額以上の財産があれば相続税がかかり、金額に応じては税率も高くなります。
法人の場合、会社の所有財産には相続税がかからないので、相続税を払うリスクや金額を減らすことが可能になります。
消費税が2年間免税になる
資本金が1,000万円未満である場合、その期の消費税が免除となります。
二年目は資本金の要件に加え、特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合のいずれかの要件を満たす場合に免除となります。
設立すぐだけの話ではありますが、消費税が免除になるのは大きなメリットでしょう。
②信頼度に関するメリット
資本金で信頼性を公的に示せる
近年働き方が多様化し、個人で働く人々が増えていますが、信頼を得る点では会社の方に優位があります。
会社は登記で公的に資本金などの資金力を保証されている為、外部からの信頼を得やすいです。
近年、会社法の改正により、資本金1円~会社が設立できるようになりました。
しかし、未だ資本金の多さを信頼できるかどうかの判断軸に使う人は多いです。
このため、資本金の必要ない個人事業主は、ビジネスの場で少なからず舐められてしまう傾向にありますし、会社を設立して、資本金があるというだけで、信頼力があります。
資本金に関してお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
融資や資金調達の幅が広がる
個人事業と違って会社では資本金の登記や、貸借対照表や損益計算書の作成などの義務があり、銀行は会社の経済状況を容易に把握できるので資金調達の条件が個人の場合よりも緩くなります。
一方、個人事業で銀行から融資を受けようとする場合、第三者保証人を求められるなど条件が非常に厳しくなります。
③その他のメリット
有限責任にできる
個人事業では、経営が悪化した際に、仕入債務や金融機関などからの借入金、滞納している税金などは個人の負債として背負うことになります。
一方、株式会社や合同会社を設立した場合には、個人保証による借入を除くと出資金の範囲内での責任になります。
人材採用を行いやすい
個人事業主の元で働きたい、と自ら希望してくる人はなかなか現れることはないでしょう。
会社であれば、社会的な信頼があり、さらに正社員採用などの安定的な雇用の魅力を示せるので人材を採用しやすいです。
決算月を自由に決めることができる
会社は一般的に3月が決算月というイメージがありますが、個人事業と違って会社の場合決算月を何月にするかを自由に決めることが可能です。
その会社の業種や繁忙期等を考慮に入れた設定が可能になります。
会社設立のデメリット
会社を設立するデメリットは、大きく分けて3種類あります。
「費用面」「自由度が狭まる点」です。
「自由度が狭まる」というのは、ある種、当然のデメリットです。
会社という信頼性の高い事業形態になる以上、ルールがあります。
そのルールを維持できるため、
- 費用
- 自由度が狭まる(ルールが増える)
①費用面のデメリット
会社の設立や運営に時間やコストがかかる
会社設立の登記に20万円程の費用が掛かり、また毎年会社が赤字であっても7万円程の法人住民税の均等割を支払う必要があります。
会社の規模によっては毎年7万円のコストは重い負担になる可能性があります。
②自由・ルール面のデメリット
社会保険への加入が義務づけられている
会社では、社長一人であっても社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が義務づけられ、国民健康保険と国民年金に加入する場合に比べて高額になります。
個人事業の場合は従業員が一定の数以下の場合は社会保険への加入は必須ではありません。
事務負担が増加する
個人事業と比べると、会社ではより厳しいルールのもとで会計処理を行う必要があります。
また、取得税を支払う個人事業と比べて、会社では法人税を支払うことになります。
法人税の計算や申告はより複雑なので、負担は増加します。
会社のお金を自由に使えない
個人事業主は事業で得たお金を自由に使うことが出来ますが、会社の場合は会社の財産を自由に使うことはできません。
個人的に会社の財産を使う場合は、会社と賃貸契約を結ぶ必要があります。
事業の廃止に費用がかかる
事業を廃止するとき、個人事業の場合は税務署への届出だけで済みますが、会社の場合は税務署への届出だけでなく、会社の解散登記も必要になります。
事務負担に加え、30,000円程度の費用が必要となります。
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