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一人親方は法人化するべき?一人で会社を作る実例とメリット・デメリット

建築業を営んでいる「一人親方」の方は今後事業を拡大していくために法人化するか、それとも個人事業主としての運営形態を続けるか迷うこともあるかと思います。

「法人化すると税金面でメリットがある?」「法人化のリスクを知っておきたい」という方のために今回は一人親方が法人化した場合のメリット・デメリットをまとめています。

法人化すべきタイミングもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

一人親方の法人化

一人親方とは?

一人親方とは、建設業や林業などで、労働者を雇用せずに自分自身または家族のみで事業を行う個人事業主のことです。

建設業に携わる多くの方は、一定の修行を終えてから独立を選択し、独立してすぐには一人親方として活躍されることが多いでしょう。

一人親方となれば、会社の従業員や組織の一員としてではなく、自分の裁量で働き方を決めることができるようになります。

その反面、労災保険や雇用保険がないため、保険組合に入るなど自分の身や労働環境を守ることのできるように注意が必要です。

一人親方は税理士から法人化を勧められる?

税理士から法人化を勧められたことはないでしょうか?

個人事業主である一人親方は、税理士から法人化を勧められることが多々あります。

個人事業主のままであれば、法人税がかからないメリットがあるのですが、一方で、収入が一定を越えたら法人化した方が節税できるというメリットもあります。

それこそが、税理士が法人化を勧める理由であるといえます。

また、事業を拡大する上では法人として営業していく方が、社会的な信頼を得やすいという点も法人化のメリットとして挙げられます。

一人親方が法人化するメリット

ほかにも一人親方が法人化することで得られるメリットはいくつかあります。

ここでは、そのメリットをさらに詳しく紹介していきましょう。

節税できる

まず、税制面での利点を見てみましょう。

建築業は、売上金額が大きいのも特徴で、企業一年目でも売り上げが1000万円を超えることが多くあります。

法人でも個人でも、消費税の納税義務が発生するのは1000万円以上の売り上げがあった後、2年後からです。

ということは、個人事業主としての最初の2年のあいだに消費税の免除を受けた後でも、法人化すればもう2年間の消費税納税免除を受けられるということになります。

さらに、所得税や住民税に関してもメリットがあります。

法人化した場合、法人から支払われる役員報酬には給与所得控除が適用されるため、支払う所得税や住民税が、個人事業主として納めるよりも少なくなる可能性が高いのです。

ただし、法人化することで、社会保険料の会社負担分や税務申告を依頼することによる税理士報酬などの経費がかかるという負担があることもおさえておきましょう。

信頼性が高まる

やはり法人化した場合、社会的な信頼が得やすく、法人との契約がとりやすくなるといわれています。

取引先によっては社会保険に加入している法人としか取引できないというところもありますが、そのような取引先とも契約できるようになります。

同じ会社との取引だけでなく、新しくほかの会社とも取引をするには、法人であった方が信頼を得やすく、市場を開拓しやすいといえます。

事業拡大ができる

法人化すると、様々な経費や手続き、書類の扱いなど、会社の経営に関わる煩雑な事務作業が増えてしまい、職人として現場に立つ機会が減ることが多い一方で、組織や事業の規模を大きくすることができます。

法人化することによって、規模の大きな取引先との契約が成立しやすくなったり、また労働者を雇うことで引き受ける仕事の量を増やすことができたりと、組織・事業の規模を拡大していくという将来的な目標があるのであれば、法人化は検討するべきステップだといえます。

経費で落とせるものが増える

法人化することで、仕事場を社宅にするなど、経費にできるものが多くなるというメリットもあります。

特に出張が多い人にうれしいのが、法人でなければ落ちない、出張手当という経費です。

これによって法人であれば、実費にプラスして、経費として7日分の出張手当を増やすことができます。

国内であれば日当5000円、海外であれば日当1万円程度までが限度だそうです。

一人親方が法人化する際の注意点

新たに認可を取得する

個人事業の建設業許可は、法人へは引き継がれないので、新たに法人として建設業許可を申請する必要があります。

また、建設業許可は一定期間以上の実務経験や経営経験が必要となるので、起業時ではなく、起業した後から申請もできます。

建設業許可を申請する際、会社運営の基本的規則を定める「定款」の事業目的には、許可が欲しい業種名を記載していることが必要となります。

定款にその記載がない場合、変更登記をしなくてはなりませんが、それには費用がかかってしまいます。

ですので、起業後に建築業許可の申請をする場合でも、建築業の業種の中から、どのような建築許可をとりたいのかをあらかじめ考えておくのがベターでしょう。

資本金が必要である

建築業許可の要件の一つに、「財産的基礎」という項目があります。

一般建設業許可の場合、「純資産の額が500万円以上あること」「500万円以上の資金調達能力があること」という要件のどちらかに当てはまることが必要です。

起業と同時に一般建設業許可を申請する際、資本金を500万円以上用意すれば、条件を満たすことができます。

ですので、必ずしも500万円の資本金を用意する必要があるわけではなく、建築業許可に関しても、通帳に500万円以上入っているタイミングで申請をすれば問題ありません。

ただし、資本金として会社の口座に入金した場合、そのお金は会社のお金になり、入金後すぐに引き出すことはできなくなりますので、資本金に充てるお金は、生活費や納税を圧迫しない範囲で用意しましょう。

タイミングを間違えると経済的負荷がある

法人成りを勧められたり考えたりする基準として、売り上げが1000万円を超えたら、といわれることがあります。

それは節税の項目で触れたように、消費税の納税義務が発生する1000万円の売上高が出たタイミングで法人化することで、消費税の免除を受けられるからです。

一方で、計算してみると、利益(事業所得)が500万円を超えたあたりから、法人成りによる節税の効果が表れることがわかります。

ここで注意したいのが、売り上げが1000万円であったからといって、利益(事業所得)が500万円以上あるとは限りません。

仕入れなどの経費が800万円かかっていた場合、

  • 売り上げ(1000万円)-経費(800万円)=利益(200万円)

となり、利益は200万円です。

法人化による節税は、利益が大きければ大きいほど効果が見込めます。

しかし、消費税納税の免除があっても利益が500万円を切っていれば、節税の効果が期待できないための、法人化のタイミングには気を付けましょう。

社会保険の引継ぎを行う

社会保険とは、「健康保険」と「厚生年金保険」のことです。

法人化した場合、健康保険と厚生年金保険の会社負担分として、従業員の分も負担することになります。

健康保険に関しては、通常、法人や従業員5人以上の個人事業の場合、「協会けんぽ」という健康保険に加入しなければなりません。

一方、「建設国保」に加入している個人事業主が法人成りした際、または従業員が5人以上になった際には、建設国保を継続して引き継ぐことができ、協会けんぽに加入しなくてもよいことになります。

建設国保とは、建設工事業に従事している個人事業所の事業主・従業員と一人親方を組合員とする国民健康保険組合です。

保険料の会社負担は協会けんぽにはありますが、建設国保にはなく、保険料の全額を従業員が負担します。

法人として建設国保に加入するには、あらかじめ個人事業主時代に加入しておくことで、法人成りの際に引き継ぐことができます。

資金力が十分にない時期の会社にとっては経営の一助となりますので、要チェックでしょう。

法人化はした方がいいのか?

法人化を選ぶ理由やタイミングはさまざまですが、法人成りするのであれば、効果的なタイミングで行いたいものです。

そのためには、税金や社会保険の制度など、多くのことを勘案しなければなりません。

法人化した後も十分な利益が出ることが法人成りの大前提となりますので、事前に綿密な計画を立てる必要があります。

特に、税額シミュレーションには高度な専門知識が必要となりますので、正確に税額計算をしたい場合は税理士などの専門家に相談するのが信頼性の高い手段といえます。

また、法人化した後でも、決算の作業など、お金に関する手続きは避けられません。

お金に関することなので正確さが求められますが、税金を納める作業は煩雑であったりと、何かと大変なことも多いようです。

税理士は、税務相談や節税方法の適切なアドバイスもしてくれる、税金の専門家です。

税金の法人化した際のメリットを最も効果的に引き出すためにも、一度税理士に相談してみることをお勧めします。