• HOME
  • 合同会社の事業譲渡や売却のその後、注意点、新会社設立について

合同会社の事業譲渡や売却のその後、注意点、新会社設立について

合同会社とは、2005年制定の会社法によって設置された会社の一形態のことです。その大きな特徴は、出資者である株式会社の株主と同じく、合同会社の社員全員が会社の債務について有限責任である点です。

合同会社には、株主会社と似ている点もありますが、特に会社を売却する場合に大きな違いがあります。この記事では合同会社の事業譲渡や売却とその注意点を解説します。

合同会社の売却や事業譲渡が難しい理由

結論を先取りしますと、合同会社の売却はそのままでは難しいと言われています。というのは、合同会社の特徴でもある、社員間の平等性を担保する合同会社の仕組みに理由があります。それでは、売却を難しくしている大きな理由として、二点を見ていきましょう。

①合同会社の持分を譲渡するには社員全員の承認が必要だから

最初の段階として、合同会社の経営に参画するには持分を持っている社員から持分を譲渡してもらわないといけません。

しかし、合同会社では株式会社と違い、所有と経営が一致し、定款変更は全員一致でないとならず、持分の譲渡も、全員の同意(定款の定めがない時は社員過半数の同意)が必要です。

このように、多くの場合、合同会社では社員全員の同意が必要なので株式会社のように譲渡は簡単ではありません

②持分を承継するだけでは権限が不十分だから

仮に社員として認められたとしても、問題は残ります。
合同会社においては、出資額に関係なく社員は議決権を一つずつ持っており、一人の株主が多数の議決権を持つことができないので、多数決を利用することが難しく、強権的な経営はできない会社の運営スタイルであると言えます。

そのため合同会社の社員として持つ議決権は、いくら出資したとしても、1しか持つことができません。

しかし、社員となることができても、これでは合同会社の経営を支配するには至らず、買収する意味がありません。合同会社を売却する時には、会社変更手続きをして、株式会社に形態を変更しないと売却は難しいでしょう。

POINT

・社員の平等性の強い合同会社の特徴
・合同会社の持分の譲渡には、社員全員の承認が必要
・合同会社で社員が持てる議決権は、出資額に関わらず、1のみ

合同会社の事業を譲渡することなら可能

 合同会社の売却は、株式会社と比べて買収する側にとって困難が大きいことがわかりました。

しかし、事業譲渡であれば、合同会社のままでも可能です。そもそも事業譲渡は、会社は存続したまま、その会社の事業のみの一部、または全部を売却する事を意味します。会社そのものの売却ではなく、事業譲渡では個別に必要な事業だけを選んで売ることができ、売り手にも買い手にもそれぞれメリットがあります。

売り手にとっては、売りたい事業だけを売却することができ、会社自体は廃業するわけではありません。さらに、事業譲渡で得た資金を活用することもできます。

買い手にとっては、必要な事業だけを選んで買うことができるため、買収にかかる費用を抑えることができます。

事業譲渡を行う場合、その事業における資産、負債、取引先や契約上の地位等も売却先へ移転されますので、契約関係が譲渡する合同会社から買い手側の会社に移転する場合は、契約の相手方(債権者等)の同意が必要になります。契約相手となる合同会社の持ち主は、合同会社の社員なので、会社の定款によって過半数あるいは全員の同意が必要となります。

合同会社の場合は買収が困難ですが、事業譲渡であればこのようにメリットも多いため、会社の買収・売却ではなく事業譲渡が行われることがほとんどです。

POINT

・事業譲渡では、会社そのものではなく、事業のみを売買する
・事業譲渡には、売り手にも買い手にもメリットが多い
・合同会社の場合、会社の売却ではなく事業譲渡を行うことが多い

合同会社の事業を売却する際の注意点

メリット

従業員の雇用を確保できる

事業を譲渡する場合は、事業のみの引継ぎになるので、事業は譲渡しても従業員は残すことが可能です。

後継者問題を解決できる

後継者がいない問題に直面している中小企業は、現在120万社にものぼると言われていますが、事業譲渡によって後継者問題を解決できる場合があります。

中小企業にとってメリットが大きい

事業譲渡は、会社の規模が大きいほど手続きと税金の負担が大きくなります。例えば、株主総会の手間や取引先・従業員との再契約、許認可の取得や税務面などです。
しかし小規模の中小企業であればデメリットは小さくなり、メリットを大きく生かせます。

デメリット

事業譲渡には株主総会が必要

事業譲渡の手続きでは、特例の場合を除いて原則株主総会の特別決議が必要です。

株主が多いほど手間とコストがかかるため、小規模の企業ではそれほどデメリットになりませんが、規模の大きい企業ほどデメリットが大きくなります。

事業譲渡完了までには複雑な手続きが必要

株式譲渡や会社分割など他のM&A手法(M&Aとは、合併と買収を意味する行為のことを指します)は包括的に引き継ぎますが、事業譲渡は個別に取り引きするので手続きも複雑になりがちです。

特に大企業になるほど事業譲渡手続きは大きな負担となります。

事業譲渡は負債や債務が残る場合もある

事業譲渡は株式譲渡や会社分割などのM&A手法と違い、買い手側に債務を引き継ぐ必要がありません。

そのため、売り手側に債務が残ることになります。交渉によっては引き継ぐ債務の範囲を定めて譲渡することも可能ですが、その際は手続きがさらに煩雑になるデメリットがあります。

注意点

取引先への対応が必要

従業員の場合と同じく取引先の場合も、対象の取引先に対して個別に説明をし、承認を得る必要があります。数が多かったり交渉が難航したりする場合は大きなデメリットとなります。

中小企業や個人事業の場合は、経営者の人間関係で取引関係が続いていることも多いので、取引を続けてもらえるかどうかの確認は事前にしっかりと把握しておく必要があります。

社内体制や事業を変更するなら合同会社を株式会社に変更する手も

合同会社を売却したい場合、そのままではやはり買い手にとって困難が多く、買い手が付きにくいでしょう。そのような場合、合同会社を株式会社へ変更することも手ではないしょうか。株式会社への変更は、新しい事業を始めたい場合の組織変更としてもおすすめできる方法です。

合同会社から、株式会社へ会社の形態を変更する手続きは以下の通りです。

①社員全員の同意

会社の変更は重要事項なので、社員全員で合同会社から株式会社への移行の是非について議決をします。その上で全員が同意した時に会社の変更が可能になります。

②債権者保護手続き

会社の形態を変えるのは、債権者にとっても重要事項なので債権者保護の手続きをします。債権者は会社の変更に異議がある場合には、合同会社に弁済(債務を支払う)や担保を請求する事が出来ます。

③登記申請

債権者への催告は一カ月の猶予ですので、その間は異議申し立てを待ちます。一カ月が過ぎたら今度は法務局で登記申請に入ります。必要な書類は、法務省のホームページからダウンロードすることができます。

POINT

・会社を売却したい場合、合同会社を株式会社に変更することも可能
・手順は、①社員全員の同意、②債権者保護手続き、③登記申請の三つ

合同会社を買収し株式会社に吸収させることも可能

合同会社を会社のまま買いたいという場合には、株式会社が、合同会社を吸収合併するという方法もあります。
吸収合併については、特例有限会社を存続会社とする場合を例外として、合同会社、合資会社、合名会社、これらのいずれの形態の会社とも可能です。ただ、株式会社と持分会社(合同、合資、合名会社)との間の合併では多少異なる部分があると言います。株式会社とは、株式を発行して投資家から資金を調達し、その代金で事業活動を行なう会社を指します。一方で、持株会社とは、他の株式会社の株式を保有することを目的とする会社のことで、ホールディングスとも呼ばれます。

例えば、合併により株式会社が消滅し、持分会社が存続となり合併会社が対価として消滅会社の株主に対して持分会社の持分が交付される場合、会社法783条2項の定めにより、消滅会社の総株主の同意を得ないといけません。

同様に、消滅会社する株式会社が種類株式を発行している場合には、存在会社の持分を交付される種類株主全員の同意が必要となります(会社法783条4項)。これらの定めは、株主から持分会社の社員という異なる法的地位になること、また、合資会社の無限責任社員や合名会社の社員の持分が交付される場合には有限責任から無限責任に変わることもあり得ることから求められる保護規定といえます。

POINT

・合同会社の吸収合併は可能
・吸収合併するのが持株会社か株式会社かで、違いがある

まとめ

ここまで、合同会社の事業譲渡や売却について、様々な点を解説してきました。
まず、合同会社の買収はそのままでは困難であり、事業譲渡という方法が多く採用されています。事業譲渡の場合、買い手にも売り手にもメリットが大きいと説明しましたが、それぞれにとってのメリット・デメリットも確認することも必要です。例えば、中小企業にとってはより事業の売却のメリットが大きく、大企業ほどデメリットが大きくなってきます。

事業譲渡以外の方法として、合同会社を会社として売りたい場合には、株式会社に変更するというやり方を説明しました。また、買収する側としては、合同会社を吸収させることも可能です。ケースによってベストな選択肢は異なりますので、専門家に相談することも考えてみてはいかがでしょうか。

当社、経営サポートプラスアルファは、会社設立から資金調達まで包括的なサポートが可能です。

このため、「事業が上手く行かない、もう少し融資してくれたらなんとかなるのに」「新しい事業を買ったはいいけど拡大するために資金調達をしたい」「事業を買ったので新会社を設立したい」などお悩みをお持ちの方の力になれます。

例えば、資金調達や融資を受ける方法をアドバイスしたり、多くの人が申請し忘れている助成金なども代行して申請したりすることが可能です。

実際に会社設立や資金調達を支援する身からすると、損をする会社設立や融資をしている方が多くいらっしゃいます。

会社をつくる際や新しい事業を始める際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。当社で精一杯サポートさせて頂きます。