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医療法人を設立するには?費用や期間、デメリットを解説

医療法人とは?

医療法人とは、医療法で定められた法人を指します。

個人事業主として開業していた診療所、クリニック、病院などの医療機関が都道府県知事へ届出を出し、認可を受けると医療法人として医療機関を開設できるようになります。

事業内容は異なるとはいえ、自分で事業をしていた個人事業主が法人成りし、株式会社を設立して代表取締役となるのと似ているといえます。

また、個人事業主だったお医者さんは支払基金や国保連合会から診察報酬を受け取ります。

医療法人になると支払基金や国保連合会からの診察報酬は医療法人に支払われ、理事長などの役員となったお医者さんに役員報酬として支払われるようになります。

これも、個人事業主が株式会社の役員となり、役員報酬を支払われるのと同じです。

医療法人の種類

医療法人には、医療法人社団医療法人財団の2種類があります。

設立のために拠出するか、寄付を集めるかがおもな違いです。

また、医療法改正にともなって常勤の医師数によって一人医師医療法人と呼ばれる場合もあります。

医療法人社団とは

医療法人社団とは、複数の人が集まって設立される医療法人です。

医療法人設立のために、預金、不動産、備品などを拠出する目的で設立されます。

医療法人社団の基本的な事項を定めるのは「定款」です。

医療法人が解散したときは、医療法および定款に定める方法により残余財産を処分します。

医療法人財団とは

医療法人財団とは、個人は法人が無償で寄附する財産に基づいて設立される医療法人です。

医療法人財団の基本事項を定めるのは「寄附行為」です。

医療法人が解散したときは、医療法および寄附行為に定める方法により残余財産を処分します。

一人医師医療法人とは

昭和60年の医療法改正以降、常勤の医師または歯科医師が1人または2人勤務する診療所も医療法人としての認可を受けられるようになりました。

改正前の3人以上の常勤医師のいる医療法人に対して、1人または2人の常勤医師のいる医療法人を、一人医師医療法人とよびます。

ただし、呼び方が異なるだけで医療法上の区分や義務などはすべて同じです。

株式会社と医療法人の違い

株式会社と医療法人は組織上では似ていますが、法律上では株式会社は会社法で、医療法人は医療法の管轄として区別されています。

これは、株式会社と医療法人の経営上の性格の違いがあるからです。

株式会社は事業の経営によって利益を上げるのが目的です。

医療法人も医療事業の経営を目的に設立されますが、医療事業の経営は公的な側面も持っています。

そのため、株式会社のように積極的に利益を追求する営利法人ではなく、医療法人はあくまで公的な事業を経営する公益法人であると区別されているのです。

なぜ医療法人を設立するのか

お医者さんは医療法人にならなくても、個人事業主として病院や診療所、クリニックを開業・経営が可能です。

また、医療法人として医療事業をおこなうには、開設にともなう申請や手続きも多くあります。

すでに個人で改行しているなかには「わざわざ認可を受けてまで医療法人になる必要はないのでは」と考える人もいるでしょう。

医療法人という制度は、地域の医療の担い手としての役割を積極的に果たすために存在します。

前述通り、医療事業とは単純に利益を追求するのではなく、公的な側面も持っている事業です。

地域の医療に貢献する役割を果たすには、質のよい医療を提供する、透明性のある医療事業を提供しなければいけません。

質のよい医療や透明性のある医療事業の提供には、資金がかかります。

そのため、地域医療の提供への資金確保をスムーズにし、医療事業の経営困難を防いで永く地域医療に貢献できる医療体制を整える目的で医療法人があるのです。

診療所やクリニック、病院が質の高い医療と透明性のある経営を提供して地域医療に貢献するための、資金や経営面でのサポートのために医療法人は設立されます。

そのため、税制や経営面でも医療法人にはメリット・デメリットが発生するのです。

次に、具体的な医療法人化のメリット・デメリットを解説します。

医療法人化のメリット・デメリット

法人化をするまえに覚えておきたい、個人事業から医療法人化をする際のメリット・デメリットを解説します。

医療法人化するメリット

医療法人化すると、以下8つのメリットが得られます。

  • 参考税率が個人と比較して下がる
  • 相続しやすくなる
  • 分院も開設しやすい
  • 所得を分散できる
  • 資金調達やリスク分散ができる
  • 損金にできる支出が増える
  • 欠損金の繰越年数が長くなる
  • 役員退職金を受け取れる

順に解説していきます。

参考税率が個人と比較して下がる

個人の場合は所得税、医療法人になると法人税が徴収されます。

個人の所得税が参考税率56%に対して、法人税の参考税率は32%のため、節税が期待できます。

相続しやすくなる

医療法人にすると、相続がスムーズになるメリットがあります。

個人経営のクリニックを自分の子どもに継がせる場合は、相続性が発生します。

一方、医療法人の場合は事業承継となるので、理事長を子どもの名前にするだけです。

税制面でも手続き面でも相続の可能性があるなら多くのメリットが得られます。

分院も開設しやすい

医療法人になると、分院が開設できるようになります。

また、介護老人施設の設置にともなう有料老人ホーム、訪問看護ステーションの解説など、事業拡大にもつながります。

所得を分散できる

個人経営の場合、所得は開業医ひとりにかかるため所得税が大きくなってしまいます。

一方で、医療法人は理事長のほかにも家族を役員にすると、役員報酬として所得を分散できます。

所得を分散することで、かかる所得税を少なくする節税効果が期待できます。

ほかにも給与支払いが発生するので最大230万円の給与所得控除が受けられる、支払基金・国保連合会からの医療報酬振込みの際に引かれていた源泉徴収がなくなるなどのメリットもあります。

資金調達やリスク分散ができる

医療法人になると資金調達がしやすくなります。

個人事業で融資を受ける場合は理事長ともうひとり保証人が必要なのに対して、医療法人なら主体が医療法人、保証人は理事長となるため事実上ひとりで資金調達が可能です。

また、融資や借金の名義を理事長ではなく医療法人名義に移せるので、理事長自身のリスクを医療法人へ分散することもできます。

損金にできる支出が増える

理事長や役員とした家族の生命保険料や、医療法人名義とした自動車など、損金や経費に計上できる支出が増えて節税効果が得られます。

欠損金の繰越年数が長くなる

繰り越しできる欠損金が9年と、個人の3年に対して長くなります。

役員退職金を受け取れる

医療法人になると、生命保険の途中解約を利用して役員退職金の準備や支払いができます。

医療法人では役員が加入する生命保険は、生命保険料の半額を経費として計上できます。

そのため理事長本人が生命保険を途中解約すると、支払った生命保険金以上の額を受け取れるため、退職金ができるのです。

生命保険の加入は退職金の準備以外にも、万が一のことがあった場合に補償が受けられるメリットもあります。

医療法人化するデメリット

医療法人になると、税制面や資金調達、事業の拡大面で多くのメリットが得られます。

その一方で医療法人化のデメリットも覚えておかなければいけません。

医療法人化には、以下8つのデメリットがあります。

  • 事務が複雑になる
  • 残余財産が国にもっていかれてしまう
  • 余剰金の配当禁止になる
  • 地域税が徴収される
  • 接待交際費の損金算出限度額がある
  • 厚生年金の加入が必須になる
  • 一度なったらかんたんにやめられない
  • 監督官庁のチェックが厳しくなることがある

順に解説していきます。

事務が複雑になる

医療法人になると、個人経営よりも提出する書類が増えるので事務が複雑になります。

医療法人が税務署や都道府県知事に提出しなければいけない書類は以下の通りです。

  • 事業報告書
  • 財産目録
  • 貸借対照表(法人設立の新法・旧法で提出書式が異なる)
  • 損益計算書
  • 監事報告書

さらに、資産総額の登記や役員改選登記も必要です。

個人経営よりも事務作業の負担が大きくなる点を覚えておきましょう。

残余財産が国にもっていかれてしまう

医療法人が閉院した際に財産が残っていると、残余財産として国に持っていかれてしまいます。

残余財産を持っていかれないようにするには、役員などの退職金として支払って財産を残さないようにしなければいけません.

また、理事長が急に亡くなった場合生命保険金が発生するため、閉院すると残余財産となってしまいます。

この場合はいったん診療所や病院を休業して死亡退職金・弔慰金などで払い出す方法があります。

休業しておけば後継者ができたときのために、医療設備や機器を残しておけます。

余剰金の配当禁止になる

医療法人は地域の医療貢献という公的な側面を持っています。

そのため、純粋な営利目的で経営する株式会社と異なり、余剰金の配当が禁止されています。

利益の一部を寄付主などに配当することはできません

地方税が徴収される

医療法人になると、最低7万円の地方税の支払い義務が発生します。

地方税は均等割のため赤字でも徴収されます。

接待交際費の損金算出限度額がある

個人経営の場合接待交際費は全額経費として計上できました。

一方、医療法人になると接待交際費の定額控除限度額800万円までになります。

さらに、接待交際費の10%は経費計上できません。

厚生年金の加入が必須になる

個人開業の場合、従業員が5人未満であれば社会保険と厚生年金への加入義務はありません。

一方医療法人になると従業員の人数にかかわらず、社会保険と厚生年金への加入が義務化されます。

なお、医師国保の継続加入は医療法人になっても可能です。

一度なったらかんたんにやめられない

医療法人は地域医療の担い手として資金調達をしやすくする、事業を永続させる目的で設立されます。

医療法人そのものに永続性を求められているため、閉院や解散時は都道府県の認可が必要です。

その際、個人的な理由による解散は認められないため理事長が引退するときには閉院ではなく事業承継して、医療法人自体は継続させなければいけません。

理事長が引退するときにはすぐに閉院できる個人開業と異なり、医療法人では子どもに継がせる、新しく理事長になる人を探す、M&A先の検討が必要になる場合があります。

監督官庁のチェックが厳しくなることがある

医療法人は、医療事業の透明性を提供するためにも設立されます。

そのため、地域によって差はありますが監督官庁のチェックが厳しくなることがあります。

また、医療法人は設立申請時に沿った経営を求められています

設立時に提出した事業計画書に、あらかじめ記載されていない内容の事業は、自由に事業展開できないことがあります。

医療法人化すると、メリットもデメリットも多くあります。

デメリットを踏まえつつ、メリットが大きい場合は医療法人化を目指しましょう。

医療法人化には都道府県知事の認可が必要となり、それにともなう必要な書類も発生します。

次に、医療法人化する際に必要となる書類を解説していきます。

医療法人化する際に必要な書類

医療法人化する際に必要な書類は、現在の診療所やクリニックを開設した際に準備したものと、新しく作成するもので分かれます。

それぞれで必要な書類について解説していきます。

既にあるもので用意するモノ

現在の診療所やクリニック開設時に作成・準備したもののなかで、以下の書類が医療法人化の際に必要となります。

  • 役員(理事、監事)、社員になる方の印鑑証明と履歴書
  • 医師免許証の写し
  • クリニック開業の際に提出した開設届
  • 現在の診療所までの略式図
  • 現在の診療所の図面
  • 施設等の概要
  • リース物件の契約書
  • 不動産の謄本や賃貸借契約書
  • 借入契約書及び支払い予定表
  • 支払った負債の根拠書類
  • クリニックの過去2年間の収支実績表
  • 過去2年分の確定申告書

順に解説していきます

役員(理事、監事)、社員になる方の印鑑証明と履歴書

印鑑証明は発行日から3ヶ月以内のものを、履歴書は設立総会の日付のものを用意します。

医師免許証の写し

理事長、管理者、理事医師それぞれの分を、原寸大のものを用意します。

クリニック開業の際に提出した開設届

開設届に、変更届を添付して提出します。

現在の診療所までの略式図

最寄り駅や、交通経路を表示します。

現在の診療所の図面

1/50~1/100程度のものを用意します。

施設等の概要

訪問看護ステーションや有料老人ホームなど、付帯業務の施設がある場合に提出が必要です。

施設周辺の略式図と建物の平面図を提出します。

リース物件の契約書

現行のリース契約時の契約書の写しを準備します。

また、リース契約を法人名義で引き継ぐことへの相手方の承認書類もリース会社ごとに作成します。

資産計上しないリース契約がある場合、リース物件の一覧表も添付します。

不動産の謄本や賃貸借契約書

賃貸借契約引継承認書(覚書)、仮受け付けから3ヶ月以内発行の土地・建物登記事項証明書、設立しようとする医療法人の利害関係者等から物件を賃借する場合は近傍類似値についての3点を作成します。

借入契約書及び支払い予定表

開業時の設備投資の支払いが残っている場合に提出します。

支払った負債の根拠書類

工事請負契約書や領収書などを根拠書類として準備します。

クリニックの過去2年間の収支実績表

クリニックや診療所の2年分の確定申告がない場合は、申請の直近までの試算表を添付します。

過去2年分の確定申告書

申告書(第一表、第二表)(個人番号(マイナンバー)が表示されないように「控用」の写しを添付)、所得税青色申告決算書、所得の内訳書、所得税青色申告決算書(一般用)付表 ≪医師及び歯科医師用≫をそれぞれ添付します。

新しく作成するモノ

現在ある書類に加えて、以下の書類を新しく作成します。

  • 医療法人設立の認可申請書
  • 医療法人の定款
  • 設立総会議事録
  • 法人設立者(院長)の経歴書
  • 役員・管理者就任承諾書
  • 委任状
  • 事業計画書
  • 予算書
  • 財産目録
  • 医療法人設立を決定した際の設立総会議事録
  • 社員および役員名簿

順に解説していきます。

医療法人設立の認可申請書

日付は都道府県が指定したものとします。

医療法人の定款

医療法人社団は定款、医療法人財団は寄付行為を作成、提出します。

設立総会議事録

仮申請より以前の開催日付のものを提出します。

法人設立者(院長)の経歴書

設立総会の日付のものを提出します。

役員・管理者就任承諾書

設立総会の日付のものを提出します。

委任状

設立総会の日付のものを提出します。

事業計画書

法人後の2~3ヶ年のものを提出します。

法人の初年度が6ヶ月未満の場合は3年分の事業計画書が必要です。

予算書

予算明細書、職員給与費内訳書を法人後の2~3ヶ年のものを提出します。

法人の初年度が6ヶ月未満の場合は3年分の予算書が必要です。

財産目録

基準日に合わせた財産目録明細書、不動産を拠出する場合の不動産鑑定評価書、基準日に合わせた減価償却計算書、現物拠出の価額証明書、基金制度を採用する場合に必要な基金拠出契約書等、基金制度を採用しない場合に必要な拠出(寄附)申込書、仮受け付け時点で発行から3ヶ月以内の預金残高証明書、未収入金を拠出する場合は直近2ヶ月分の診療報酬等の決定通知書、基準日に合わせた設立時の負債内訳書、負債の説明資料、負債の根拠書類として金銭消費貸借契約書及び支払予定表や借入金で取得した資産の契約書又は請求書及び領収書、債権者ごとに作成する債務引継承認願を財産目録として添付します。

設立総会議事録

仮申請より以前の開催日付で、医療法人設立を決定したときのものを提出します。

社員および役員名簿

基準日に合わせたものを用意します。

書類作成時の注意

医療法人設立に必要な書類は、申請時期に各都道府県から配布される「設立の手引き」などに記載されています。

また、設立の手引きに記載がない書類も、都道府県の設立担当者から提出を求められることがあります。

必要書類は、都道府県保存用の「正本」、認可書に添付するための「副本」の計2部ずつが必要になります。

また、押印欄のある書類は原則原本が必要となるのを覚えておきましょう。

医療法人の申請や認可、登記するまでの手続き

医療法人を設立する手続きは、以下の流れに沿って行います。

  • 仮申請
  • 事前協議
  • 本申請
  • 認可
  • 登記

すべての手続きが完了するまでに約6ヶ月の長い期間がかかります。

手続きの内容を理解して、スムーズな医療法人設立につなげましょう。

仮申請

医療法人を設立するには、設立許可申請をおこなって都道府県知事の認可を受ける必要があります。

まず設立許可申請で必要なのが、仮申請です。

「仮」という名前がついていますが、以下の理由から実質的な本申請にあたります。

  • 仮申請には期間がある
  • 本申請の必要書類を提出する

順に解説していきます。

仮申請には期間がある

仮申請は、受付期間が定められています。

仮申請→本申請の流れのため、受付期間内に仮申請をおこなわないと、本申請には進めません。

もしも仮申請の受付期間内に申請をしなかった場合には、次の受付期間まで法人設立ができなくなります。

仮申請の期間は都道府県によって異なるため、かならず仮申請の期間を確認してスムーズな設立につなげましょう。

本申請の必要書類を提出する

仮申請という名前ですが、ただ申請をするだけでなく本申請に必要な書類を添付して申請します。

そのため、仮申請前に必要書類をすべて準備、作成しておかなければいけません。

また、捺印が必要な公的書類については仮新生児には捺印は必要ありません。

ただし、本申請時に捺印してあらためて提出することになります。

あらかじめ書類に捺印する関係者に話をしておくと、本申請時にスムーズに捺印してもらえます。

仮申請の方法

仮申請の方法は都道府県によって異なります。

ここでは、東京都の仮申請の方法を紹介します。

  • 必要書類を片面印刷、A4判で作成する
  • 提出する書類は3部ずつ用意しておく。仮申請で提出した書類は返送されないため、仮申請で1部ずつ、本申請で捺印して正本・複本の2部ずつ提出する。仮申請では原本は提出しないこと
  • 「医療法人設立認可申請書チェックリスト」に沿って必要書類を並べて、ダブルクリップで留める
  • 東京都公式ホームページ内の「医療法人設立認可に係る年間スケジュール」からダウンロードできる、「受付表」を添付して提出する

必要な書類をそろえて仮申請の受付期間内に申請したあとは、事前協議に入ります。

事前協議

仮申請で提出した設立認可申請書は、都道府県の関係部署との事前協議に入ります。

事前協議では以下の内容の審査やチェックをおこないます。

  • 提出書類の不備や内容のチェック
  • 医療法人設立申請書類の修正、必要な資料の追加提出指示
  • 保健所などの関係機関への照会
  • 申請者(院長先生)に対する面接 など

事前協議の結果、提出書類に不備があった場合は修正、追加が必要な資料があった場合は追加提出など必要な対応をおこないます。

またクリニックや診療所の経営実態の把握のための、医療法人設立申請の詳細把握と審査も事前協議にふくまれています。

保健所などの都道府県関係各所への照会や、医療法人設立をおこなった本人への面接などもおこなわれます。

必要な対応をおこない、あらためて設立認可申請書が完成すれば本申請に進みます。

なお、事前協議の結果必要な修正や追加資料の提出がなかった場合や、詳細把握や審査の結果不審な点があった場合などは設立許可申請取り下げとなります。

本申請

仮申請~事前協議を経て完成した設立許可申請書に、捺印をして提出するのが本申請です。

捺印は、今まで診療所や病院のお医者さんの個人名義だったものを、医療法人名義に切り替えるためにおこないます。

よって、捺印が必要となる関係者は幅広くいるのに注意が必要です。

具体的に、設立許可申請書の本申請時の捺印を依頼するのは以下のとおりです。

  • 医療法人の役員や社員になる予定の人
  • 開業資金を借入れた銀行などの融資先
  • 医療機器などのリース契約先
  • 医療施設のテナント、駐車場オーナーなど不動産関係者 など

仮申請の時点で、捺印が必要となる人に相談しておくとスムーズな捺印につながります。

なお、捺印が必要な書類は原則正本・副本ともに原本を提出しなければいけません。

よって、捺印は正本・副本の計2部分必要です。

参考までに、東京都の場合でほかの書類で写しでよいものを記載しておきます。

正本は原本、副本は写しでよいもの

  • 不動産鑑定評価書
  • 負債残高証明及び債務引継承認願
  • 不動産賃貸借契約引継承認書(覚書)
  • リース引継承認願
  • 土地・建物登記事項証明書
  • 印鑑登録証明書

正本・副本ともに写しでよいもの

  • 基金拠出契約書、拠出(寄付)申込書
  • 不動産賃貸契約書、その他契約書
  • 医師(歯科医師)免許証
  • 本申請の方法

本申請の方法も仮申請と同じく、都道府県で異なります。

ここでは東京都の例で本申請の流れを解説します。

  • 必要書類は都道府県保存用の正本、設立許可申請書添付用の副本の計2部ずつ必要
  • 書式に沿って、実印をもちいて捺印する
  • 正本は「医療法人設立認可申請書チェックリスト」に沿って必要書類を並べて、ダブルクリップで留めて提出する
  • 副本はクリップで留めた申請書(様式1)と定款または寄附行為、そのほかの書類はフラットファイルにとじて表紙と背表紙に法人名を記載し、提出する

本申請の受付期間も定められています。

受付期間以内に本申請が完了しないと、次回の申請受付期間(約半年後)まで待たなければいけません。

スムーズな本申請のためにも、必要書類の準備や捺印が重要です。

本申請が受け付けされると、医療審議会の調査審議に入ります。

認可

医療法人の本申請が受付されると、医療審議会の調査審議を受けます。

医療審議会とは、都道府県に設置される諮問機関です。

医療審議会によって以下の内容を諮問、調査審議されます。

  • 医療法で定められた事項や知事の諮問
  • 医療の提供に関する重要事項の調査審議

調査審議の結果、医療法人の設立認可申請が認可にとくに問題なしとの答申がおこなわれると、申請先の都道府県知事の名前で医療法人設立認可書が送付されます。

医療法人設立認可書を受け取った時点で、医療法人設立を都道府県知事に認可された状態になります。

認可を受けたあと、医療法人として設立登記をおこなうことで、医療法人が設立されます。

登記する

医療法人の設立登記は、医療法人設立認可書を受け取ってから2週間以内に地方法務局(登記所)にておこないます。

以下の設立登記事項を記載した登記申請書類を作成し、提出します。

法人の目的等

例:病院(診療所、介護老人保健施設又は介護医療院)を経営し、科学的でかつ適正な医療を普及することを目的とする、本社団の開設する病院(診療所、介護老人保健施設又は介護医療院)の名称及び開設場所は、次のとおりとする。

東京都○○区○○町○丁目○番○号
医療法人○団○○会○○病院
(診療所・介護老人保健施設・介護医療院)

名称

例:医療法人○団○○会

主たる事務所

例:東京都○○区○○町○丁目○番○号
定款(寄附行為)で従たる事務所を定めたときは、従たる事務所も登記します。

役員に関する事項

例:東京都○○区○○町○丁目○番○号
理事長 ○ ○ ○ ○

資産の総額

例:金○○,○○○,○○○円 財産目録の純資産(正味資産額)とします。

存立時期または解散の事由を定めたときは、その時期または事由

  • 資産総額の変更登記
  • 理事長の変更
  • 定款(寄付行為)変更認可を受けた登記事項の変更
  • 事務所所在地の変更

資産総額の変更登記は毎事業年度の決算後、医療法人の資産総額を登記します。

理事長の変更は名前や住所変更のほか、任期満了にともなう再任の場合にも変更届が必要です。

登記が完了したら、登記届を都道府県知事に提出します。

設立登記完了後に、法務局にて登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取り、医療法人の登記事項の届出を提出しましょう。

法人登記後に必要な対応

法人登記をすると、医療法人が設立します。

ただし、医療法人として医療事業をおこなうには、ほかの対応も必要です。

法人登記後には、以下の対応をおこないましょう。

  • 個人院の廃業届を出す
  • 開業届を出す
  • 新しい医院の施設使用許可申請を出す
  • 厚生局の指定を新しくとる手続き
  • そのほかの手続き

個人院の廃業届を出す

医療法人として開業するまえに、個人開業していたクリニックや診療所がある場合は廃業届を出さなければいけません。

廃業届を出すまでの流れは以下の通りになります。

  • 開設許可申請書を提出する
  • 廃業届を提出する

開設許可申請書を出す

廃業届を出すまえに、医療法人としての医療機関の開設許可申請書を管轄の保健所に提出します。

医療法人設立登記の定款(寄附行為)に定めるクリニックや診療所、病院の開設許可申請書を提出、受理されると保健所長もしくは都道府県知事・市長名での開設許可の通知を受け取ります。

廃業届を出す

開設許可の通知を受け取った後、個人診療所の「廃止届」を提出し、個人院の廃業届け手続きを行います。

開設届けを出す

医療法人としての医療機関の「開設届」を所轄の保健所に提出して、開設手続きをおこないます。

なお、開設届けは都道府県知事・市長名での開設許可の通知を受け取ってから10日以内に提出しなければいけません。

新しい医院の施設使用許可申請を出す

病床を有するクリニックや病院を医療法人として開業する場合には、所管の保健所への施設使用許可申請の手続きが必要です。

施設の使用許可申請がないと、クリニックや病院に患者さんの入院ができません。

入院患者も受け入れる有床のクリニックや病院を医療法人として開業する場合は、「開設許可申請」と同時に施設の使用許可申請をおこないます。

開設許可申請と施設の使用許可申請両方を受けてから、既存の病院の廃業届や医療法人としての開設届の流れに入ります。

施設使用許可申請が必要な場合は、施設を使用する時期を予測した上で、申請をおこないましょう。

廃業・開設に関して必要になる書類まとめ

廃業届・開設届で必要となる書類は、開設する病院やクリニックの規模、事業内容によって異なります。

参考までに、東京都で医療法人の設立にともなう廃業・開業で必要となる書類を以下にまとめておきました。

病院を開設・廃業する場合に必要な書類(それぞれ3部ずつ、管轄の保健所へ提出)

  • 病院開設許可申請書
  • 病院使用許可申請書
  • 病院開設届
  • 病院廃業届

診療所を開設・廃業する場合に必要な書類(それぞれ2部ずつ、管轄の保健所へ提出)

  • 診療所開設許可申請書
  • 歯科診療所開設許可申請書
  • 診療所(歯科診療所)使用許可申請書
  • 診療所(歯科診療所)開設届
  • 診療所(歯科診療所)廃止届

厚生局の指定を新しくとる手続き

個人開業から医療法人設立で切り替える場合は、今までの診療所やクリニックを廃院にして、新しく医療法人を医療機関として開設します。

これと同じく、今までの診療所が受けていた保険医療機関指定は使えないため、医療法人として新しく保険医療機関指定を受ける手続きをしなければいけません。

保険医療機関指定の手続きは、厚生局におこないます。

厚生局とは、医療機関の指定・指導・監査や保険医の登録等の業務をおこなっている都道府県の機関です。

管轄の厚生局に、医療法人の保険医療機関指定申請をおこないましょう。

通常、申請から1ヶ月ほどで保険医療機関指定が受けられます。

また、基本診療科や特掲診療科の施設基準等の指定、生活保護法や原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律などに基づく指定申請も受けている場合に該当する場合も、あらためて指定申請手続きが必要です。

保険医療機関指定と合わせて、厚生局へ該当する指定申請手続きをおこないましょう。

上記の開設手続きが完了すると、医療法人として医療事業を開業できます。

ただし、開設手続きが成立してから1年経過後も実際に診療所やクリニック、病院などが開設されない場合には、医療法第65条において設立の認可が取り消されることがあります。

そのほかの手続き

  • 税務署への手続き
  • 都道府県税事務所への手続き
  • 区市町村への手続き
  • 労働基準監督署への手続き
  • 公共職業安定所への手続き
  • 年金事務所への手続き
  • 銀行口座の開設や変更
  • 電気、水道、ガス、電話等の法人への名義変更
  • 拠出(寄附)を受けて法人の資産となったものの名義換えの手続き など

特に、個人開業時から医療法人となったあとは、名義変更が必要なものも多くあります。

変更忘れがないようにスムーズな医療法人設立につなげましょう。

法人登記後の住所変更は可能?必要な手続きと注意点について

まとめ

医療法人を設立すると、個人開業よりも多くのメリットが得られます。

設立までの手続きは多くありますが、設立後は手続き以上のメリットも受けられるでしょう。

税制面だけでなく、相続や資金調達、事業拡大上でも医療法人設立は有効です。

医療法人とは?

医療機関が地域に質の高い医療と透明性のある経営を提供するため、かつ永続的に地域医療に貢献できる目的で設立されます。

個人経営の医療機関がかかえがちな経済的な困難を防ぐために、資金調達がしやすかったり、税制面で優遇されていたりするのが、医療法人の特徴です。

医療法人のメリットは?

参考税率が個人と比較して下がる、相続しやすくなる、分院も開設しやすい、所得を分散できる、資金調達やリスク分散ができる、損金にできる支出が増える、欠損金の繰越年数が長くなる、役員退職金を受け取れるメリットがあります。

医療法人のデメリットとは?

事務が複雑になる、残余財産が国にもっていかれてしまう、余剰金の配当禁止になる、地域税が徴収される、接待交際費の損金算出限度額がある、厚生年金の加入が必須になる、一度なったらかんたんにやめられない、監督官庁のチェックが厳しくなることがあるというデメリットがあるのを忘れずに覚えておきましょう。

医療法人化する際に必要な書類は?

医療法人化する際に必要な書類は、現在の診療所やクリニックを開設した際に準備したものと、新しく作成するもので分かれます。

それぞれで必要な書類について解説していきます。

  • 役員(理事、監事)、社員になる方の印鑑証明と履歴書
  • 医師免許証の写し
  • クリニック開業の際に提出した開設届
  • 現在の診療所までの略式図
  • 現在の診療所の図面
  • 施設等の概要
  • リース物件の契約書
  • 不動産の謄本や賃貸借契約書
  • 借入契約書及び支払い予定表
  • 支払った負債の根拠書類
  • クリニックの過去2年間の収支実績表
  • 過去2年分の確定申告書

上記に加えて、新しく以下の書類も必要になります。

  • 医療法人設立の認可申請書
  • 医療法人の定款
  • 設立総会議事録
  • 法人設立者(院長)の経歴書
  • 役員・管理者就任承諾書
  • 委任状
  • 事業計画書
  • 予算書
  • 財産目録
  • 医療法人設立を決定した際の設立総会議事録
  • 社員および役員名簿

医療法人を設立する手続きは?

仮申請、事前協議、本申請、認可、登記の手順を踏んでいきます。

仮申請は事実上の本申請でもあり、受付期間内の申請と書類の準備が必要です。

事前協議を経て書類の修正や追加書類の提出が済むと、本申請に入ります。

期限内に本申請書類への捺印が必要なため、あらかじめ捺印が必要な関係者にスムーズに捺印できるように相談をしておくとよいでしょう。

本申請書類を提出し、調査審議を経て認可が下りれば、医療法人としての法人登記を所轄の法務局でおこないます。

登記後開設までにする手続きは?

個人院の廃業届の提出、医療法人の開業届の提出、新しい医院の施設使用許可申請、厚生局の指定を新しくとる手続き、そのほかの手続きをおこないます。

医療法人設立をすると、税制面、資金面、相続面などで多くのメリットが受けられます。

ただし、すでに個人の病院やクリニックを開業している状態で医療法人設立をしようとすると、普段の業務に加えて医療法人設立の手続きをしなければいけません。

毎日の医療業務で書類を作成する時間がない、法務局などに足を運ぶ手間が面倒に感じる、相続やなどが発生しそうでできるだけ早く医療法人を設立したい、というときには「経営サポートプラスアルファ」の会社設立代行サービスがおすすめです。

年間200社以上の会社設立をサポートする実績があり、多くの医療法人の設立経験も豊富にあります。

スピーディかつ正確な医療法人設立手続きにくわえて、開設後の資金調達や相続問題などの経営や事業に関するサポートもおこなっています。

目的や重視したいポイントに合わせた医療法人設立ができます。

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