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家族を役員にする場合の影響は?メリット・デメリット|従業員やみなし役員についても解説

会社経営者、特に中小企業では、家族を会社の役員にすることがあります。

家族を会社の役員にすることで、経済的に大きなメリットがあるのです。

では、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか?デメリット、注意点についても解説していきます。

家族を役員にするとは?

中小企業では、家族を自分の会社の役員にしている経営者が少なくありません。

配偶者や子供、親を自分の会社の役員にすることで、所得税を抑えることができるなど、主に経済面で多数のメリットがあるからです。

しかし、特に会社や法人を設立して間もない方の中には、家族を会社の役員にすると言っても、どうやってやればいいのか?違法性はないのか?と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。経営者が家族を自分の会社の役員にする、いわゆる家族経営について解説していきます。

家族を役員にするメリット

企業の経営者が配偶者や子供を役員として登録することが多くある、ということをお話ししました。

家族を役員に登録することによって、多くの経済的メリットを得ることができます。

ここでは、家族を役員登記することで、具体的にどういった利点があるのかを解説していきます。

所得税が減る

家族を会社の役員にすることで、所得税の節税が可能です。

所得税は累進課税であるため、収入が多ければ多いほど所得税も高くなります。

最も税率の低い年収195万円未満では5%、年収が4000万円を越えると税率は45%と、半分近くを所得税として納めなければならなくなります。

逆に言えば、個人の収入を低く抑えれば抑えるほど、払わなければならない所得税は減るということです。

社長1人が受け取る予定だった額を家族である役員に分配して支払えば、1人当たりの所得を少なくすることができます。

社長家族全体に入る収入は同じでも、払わなければいけない所得税の額は減り、結果として家族全体の手取りは多くなります。

例えば、社長1人の収入が720万円だったとします。

年収が720万円の場合、控除などを考えず単純計算した場合の所得税の税率は16%、約115万円です。

しかし、仮に720万円を役員登記した配偶者とで分配し、それぞれの年収を360万円ずつにした場合、1人分の税率は約9.6%、つまり所得税は約34万円です。

配偶者の分と合わせても約68万円と、大幅に所得税を減らすことができるのです。

もちろんこれは単純計算した場合の結果であり、実際の数値とは変わってきますが、それでも大きく得をしているのが分かります。

贈与税や相続税をかけずに家族に資産を渡すことができる

家族を会社役員にすることによって節税できるのは、所得税だけではありません。

財産を贈与するとき、相続するときにそれぞれかかる贈与税、相続税も減らすことができます。

贈与税も相続税も、所得税と同じく累進課税制度が適用されており、どちらも財産の大きさによって10〜55%の範囲で課税されます。

社長の財産が多ければ多いほどこれらの税も多くなりますが、役員報酬として直接家族に給与してしまえば、贈与税や相続税はかかりません。

また、かかってしまう相続税を減らすこともできます。

社長が亡くなり、遺産相続を行う場合、配偶者が仕事をしておらず、貯蓄の能力がなかった場合、配偶者名義の財産があっても社長のものだと見なされる場合があります。

この場合、社長名義の資産+配偶者名義の資産のぶんの相続税がかかってしまいます。

しかし、配偶者が会社の役員であり、単独で資産を形成できる能力があると見なされれば、相続税がかかるのは社長名義の資産だけになります。

社会保険に加入できる

役員登記された家族は、社会保険に加入することができるようになり、老後に受け取る年金を増やすことができます。

国民年金制度は、日本に住む20歳以上60歳未満の人が加入しなければならない制度です。

加入者は自営業者やその配偶者、学生、無職などの「第1号被保険者」、会社員、公務員などの「第2被保険者」、第2号被保険者に扶養されている「第3被保険者」に分かれています。

このうち、第2号保険者は、収入によって国民年金に上乗せされる「厚生年金」にも加入しています。

配偶者が役員登記され、役員報酬が年収130万円を超えると、第2号保険者となり、厚生年金へ加入します。

社長と配偶者両方が年金に上乗せして厚生年金を受け取ることができるので、将来的に見ると得をすることができます。

非常勤役員の場合

一方で、配偶者を非常勤の役員にしている場合は、社会保険の義務の範囲外となります。

配偶者を非常勤役員にし、収入を増やすことも可能です。

ちなみに、常勤役員と非常勤役員の違いのはっきりした定義はありません。

勤務日数や報酬、監督権といった複数の要素から総合的に判断されます。

そのため、非常勤役員だからと社会保険料を払っていなかったのに、実態調査で常勤役員だと判断されてしまい、過去2年分の保険料を払わなければいけなくなる、というような事態も起こり得ます。

配偶者が非常勤役員に当たるのか不安な場合には、年金事務所に問い合わせてみるといいでしょう。

高額な報酬でも不当にならない

役員と従業員の給与体系は違いますので、高額な役員報酬を支払うことができます。

実務に見合う報酬である必要はありますが、税務調査で、法人の収益、役員の職務内容、従業員の給与、同規模の他社の状況といった基準をクリアすることで可能です。

税務調査で妥当性があると判定されれば、家族に正当に高額な役員報酬を支払うことができます。

家族を役員にするデメリット

家族を役員にすると、節税、年金の増額など、様々なメリットがあることがわかりました。

しかし、もちろんいい点ばかりではありません。

家族を役員登記した場合に考えられるデメリットはどんなものがあるのかについて解説していきます。

採用が上手くいかないリスクがある

家族経営は、ブラックなイメージを持たれることがあります。

なぜなら、親族が努力なしに高額な給料を受け取っている、血縁でなければ役員になれないなど、家族経営にはあまりいい印象がない人も少なくないからです。

このため、「どうせ出世できないから」とやる気を失ってしまう社員が多いと想定され、入社希望の新卒が入ってこなくなってしまうのです。

業績悪化時に不利

役員報酬は、基本的には定期同額給与です。

会社の利益に関わらず、一定の金額が給与されます。

業績が悪化しても、高額な役員報酬を払わなければなりません。

役員報酬を期の途中で下げると、損金算入ができなくなってしまい、法人税が増えてしまうので、役員報酬を下げたくても下げることができないのです。

現状、役員ではなくても「みなし役員」には注意

家族を役員にするときに気をつけなければならないことがあります。

「みなし役員」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。

家族の役員登記にあたって、みなし役員は注意しなければならない重要なポイントです。

みなし役員とは

みなし役員とは、会社で役員登記をしたわけではないのに、法人税法上役員と同じ扱いを受ける人のことです。

税法での役員は、会社法よりも定義が広いため、みなし役員が生まれてしまうことがあるのです。

役員だという認識なしに賞与を与えてしまうと、税務調査に引っかかってしまうことがありますので、注意が必要です。

みなし役員だと認められそうな要件

みなし役員の判定条件は、主に、

  • 役員と同じだけ経営に関わっている(助言程度ではなく、重要な決定に携わっている)
  • 株式を5%保有し、経営に関わっている

の2点です。

みなし役員の定義は曖昧ですので、会社側で判定するときは専門家に相談する必要があります。

みなし役員への対策

家族を役員にしていないのに、役員だとみなされてしまい、税務調査に引っかかってしまうことは避けるべきです。

みなし役員への対策は、中途半端な権利譲渡を避けることが一番です。

株式を保有している人には経営には触れさせない、経営に関わってもらうなら株式を保有させないなど、はっきりとした線引きが必要です。

家族に、従業員として自分の会社で働いてもらうなら、みなし役員と判定されてしまいそうなことは避けるようにしましょう。

まとめ

経営者の中には、家族を役員に登記して働いてもらうことがあります。

家族の役員登記には、所得税、相続税、贈与税の節税ができる、家族が社会保険に加入することができる、家族に高額な報酬を渡すことができる、などのメリットがあります。

一方で、家族経営ということでよくないイメージを持たれてしまい、社員のやる気の低下が起こる、新入社員を獲得しにくくなるというリスクを負うことになります。

また、役員として登記していないのに、税法上役員としてみなされ、報酬や賞与に制限がつけられてしまう「みなし役員」にも注意しなければなりません。

みなし役員と判定される条件は、株式の保有、会社経営への参画などが挙げられます。

不安がある場合は、専門家への相談が一番です。

従業員と役員の線引きをはっきりさせるなど、みなし役員への対策をするといいでしょう。

会社経営にははっきりとした成功策がなく、不安になることもありますが、家族の役員登記によって地道に利益を積み重ねていくのが大切です。

配偶者をはじめ、家族を役員にすることには様々なメリットがありますので、ぜひご検討してみてください。